藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHP(リンクをお願いします)をご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > 免疫チェックポイント阻害薬を巡る過剰報道

2016年06月01日

  

がん, くすり

2016.5.31.
免疫チェックポイント阻害薬
特に、「オプジーボ」を巡って
夢の新薬とか
奇跡の薬という類の
実力以上に過剰の評価をする
TV番組や雑誌の特集が
目につきます。

この薬、効果は確認されていますが
国内での治験の結果が示しているのは
投与された一部の
患者さんの病状が、何ケ月かの間
SD(不変)状態を維持する
というものです。
この薬で、たちどころに
がんが治るというような
劇的な効果があるわけではなく
この薬によって、命が助かる人が
次々に出てくる、というものでもありません。
あくまである程度の延命効果であり
それも投与した患者さんの何分の1か
というレベルです。

メディアの報道の中には
これでがんが治った人がいるような
表現もありますが、
それは誤解を招きます。

同じ原理のほかの薬も含め
米国では膨大な治験が実施されています。
その中には、腫瘍縮小効果を
確認されているケースもあります。
一方、悪性黒色腫では効果が
でやすいものの、固形がんでは
今一つという印象もあります。

効果がでない、ということではなく

: 効果がでる方がいらっしゃる

: 従来型の殺細胞剤のような副作用はみられにくい
(症状だけでみれば、同様の副作用が報告される
こともあるのですが、作用原理が全くことなりますので
殺細胞剤のような副作用はない、と言っても
いいのかもしれません)

: ところが、自己免疫疾患という
従来の抗がん剤と異なる副作用が
でる方がいらっしゃる
米国では盛んに指摘されてきた
重篤な自己免疫疾患が高率で発生する
という副作用報告が日本ではほとんど
報道されません。

これは問題です。

原理的には、T細胞の活性化を狙っているもので
現実の体の中では、原理通りではないようです。.
それでも概ね、T細胞の活性化をある程度、
実現しているとすると、
がん細胞に対する特異性は
弱いということになります。
実際、抗腫瘍効果が現れる率と
自己免疫疾患、つまり正常細胞が
攻撃され、症状がでる率とが
それほど変わらない
米国の治験を俯瞰した印象は
そういうところです。

決して、ダメな薬なのではなく
うまく使えばいいわけですが
がん治療を根本から変えるような
インパクトはありません。

製薬産業が大フィーバーするのは
同じメカニズムで次々に他の新薬を
開発でき、巨大な市場を狙えるからに
他なりません。
医療現場では、メディアが騒ぐような
大興奮はないのですが、
これまでの抗がん剤と挙動が
異なるので、何かと注目は
集めています。
もちろん、免疫抑制信号の抑制によって
抗腫瘍効果を発揮することを証明した
事実は重要な功績であり
やはりがんという病気は
免疫抑制の克服が鍵を握ることを
改めて実証しなおしたことに意義があります。
ただ、現時点で、がん患者さんにとって
大きく状況を変えてくれる画期的な新薬という
訳ではありません。
相変わらず、メディアは過剰な扱いをして
患者さんが、過度な期待を寄せるという
これまで何回も繰り返された現象が
起こっています。

少しは患者さんのことを考えてほしいものです。

この薬、自由診療でも積極的に処方すべきかというと
答は 「原則 NO」 です。 副作用の発生頻度という
問題もありますが、非常に重篤なものがみられるので
大病院などで、慎重に処方すべき段階と考えるのが
妥当な考え方でしょう。
先述のように米国では、様々な条件で治験を行っており
かなり高率(3割とか)で自己免疫疾患の発生が
報告されているケースもあります。
日本では、効果がでやすく、副作用が発生しにくい条件で、
一発治験を行い、そのデータで
承認申請するため、治験のデータをうのみに
するのは危険です。
治験の際には、余命の短い患者さんを
集めていますが、もっと状態がいい患者さんで
しかも免疫抑制がそこまでかかっていない患者さんに
この薬を投与した場合、自己免疫疾患の発生率は
もっと高くなるリスクも想定すべきです。
また、筋ジストロフィーやI型糖尿病といった
非常に重篤な自己免疫疾患は、投与後
時間が経つほど、症状がでてくる可能性があります。
治験に参加した患者さんほど重篤でない方に
投与した場合、余命が永い分だけ、発症率が
高くなるかもしれません。
要するに、多くの人の命を救うようなレベルの
効果ではなく、あくまで治験上、延命効果を証明した
に過ぎない新薬であり、投与法次第では
かなりの重篤な副作用がでるかもしれないのに
現時点で、患者さんに実態以上の期待を
もたせる報道は、全く患者不在というほかありません。
ところで、これまでの免疫治療はほとんどダメだった、
という報道もあります。

免疫治療というと、キノコを食べればいいとか
笑えば免疫力が上がるとか、様々なものがあり
総じていえば、ほとんどだめというのは
それほど間違いとはいえませんが、
免疫治療は全部だめなんだ思ってしまう人が
でてくるかもしれない、誤解を生みやすい表現です。
そもそも、ダメというのが何を基準にするかですが、
標準治療も、その時点で効果は証明された
ところが、進行がんの患者さんはほとんどが
お亡くなりになるわけです。

標準治療は効果は認められていますが
進行がん患者の命を救えるか、というと
多くの場合は、そこまで威力はありません。
じゃ、効果とか、奏効率というのは一体、
何の意味があるのか
という疑問がわきます。
結局、奏効率ではなく、延命効果を証明せよ、
つまり、患者さんんが亡くなるまでの日数が
どれだけ延びたかを証明せよ、となったわけです。
今回のオプジーボも基本的に延命効果を証明したに
過ぎません。

がんの標準治療全体が、閉塞感に沈んでいる中で
新しい薬がでてきたので大騒ぎするわけです。

その際、よく他の治療の批判や誹謗が行われるのですが
免疫治療というと膨大な種類があります。
明確に効果を示したものから
どうにもならないもので
様々あるわけですが
多くが、治療強度不足で、
切れ味のいい効果を示さない、
というのは事実です。
免疫細胞療法も異常な小スケールで行われているのが
ほとんどですので、それでは顕著な効果を期待できないのは
最初からわかっていることです。
他の免疫細胞療法と桁違いにスケールが異なり
技術的にも、大きな違いがある
ANKがあるではないか、と我々は言いたいわけですが
ANK療法を実施できる医療機関は、40か所を少し
超えたところに過ぎません。

他の免疫細胞療法を実施しているところは、1000にも
及びます。 手軽にできるからです。

数リットルの血液から大量のNK細胞を集めて
毎日、条件を調整しながら大量の培養液を消耗する
ANKと、20~50mlの採血だけで、血液バッグの中に
2週間、静置するだけで患者さんに戻す治療とでは
手間もコストも、桁が違います。
ほとんどの免疫治療はだめだったではないかと
言うのは、大ざっぱに言えば、事実なのです。
もっといえば、がん治療は標準治療を含め
進行がんの患者さんの命を救えるのかという
観点からみれば、ほとんどだめだったのです。

ところが、ANKを含め、いくつか例外もあるのです。
それを全部だめと誤解を生む表現をされると
患者さんが、がっかりしてしまいます。

それよりも、オプジーボを投与しても
ほとんど進行がんの患者さんにとって
命が助かることにはおそらくならないと
考えられるにもかかわらず、
現行の過剰報道に治るんだ!
と信じる人がでてくると
結局、命を縮めることになりかねません。
オプジーボが大々的に報道されるのは
「薬」という既存の承認システムの乗っているからです。
免疫細胞療法は、承認システムに乗せるにも
制度がなかったのですから、マスメディアから
好意的にみられにくいのは成り行き上、
致し方ないことです。

 

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