藤井真則のブログ

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TOP > 免疫チェックポイント阻害薬オプジーボの保険適応外処方

2016年09月05日

  

がん, くすり, 免疫

2016.9.5

患者さんに、どの薬を投与すべきか
最終的にはお医者さんが考えることなのですが。

あくまで、一般論として申し上げれば
免疫チェックポイント阻害薬の中でも
現在、承認を取得しているものについては
適応範囲を厳守すべき
です。

この薬、重篤な自己免疫疾患が高率で
発生し得るわけですが、副作用が強烈でも
それに見合う効果が期待できるなら
処方あり、という判断もあるかもしれません。

ところが、この薬、効果を発揮した
がんの種類が限られています。
基本的に、 「悪性黒色腫と、腎がんの薬」 です。
それも、若干の延命を中心に、効果が発揮される
可能性は、3割弱です。

これが、非小細胞肺がんになると
ぐっと効果への期待が薄れ、
大腸がんや、前立腺がん、には
ほぼ効果がありませんでした(米国での治験)。
この薬の開発過程では、様々な試行錯誤が
繰り返されましたが、つまり、そう簡単に一筋縄で
効果の確認ができなかったのですが、
一説として、遺伝子変異が高頻度に保存される
がん種に効きやすい、という推察があります。

悪性黒色腫や、腎がんは、遺伝子に変異が発生しても
修復されず、そのまま蓄積してしまう頻度が高いと
されています。

これはあくまで、

「発見された」「遺伝子変異」の「種類」の「数」

に過ぎません。
つまり、研究対象になりやすい悪性黒色腫の場合は
多くの研究者が遺伝子変異を次々にみつけているだけで
実際の遺伝子変異の蓄積が本当に多いのかどうか
どうでもいいマイナーな変異ばかりを数えているに過ぎないかも、、、
などなど、いくつも批判はあるのですが。

一応、一つの説として、研究データが整備されており、
悪性黒色腫や、腎がんは、遺伝子変異の修復能力が
低く、よく変異が保存されている、その点、上述の大腸がんや
前立腺がんなどは、遺伝子変異の修復能力が高く
発見される遺伝子変異が少ない、とされています。

オプジーボは、基本的に、
T細胞を漠然と活性化させてしまうようですが、
T細胞というのは、がん細胞を特異的に
認識し、攻撃するものではありません。
T細胞は、正常細胞も攻撃してしまうため
副作用として、自己免疫疾患を起こしてしまいます。

一方、効果はというと、T細胞は
がん細胞を認識するのではなく
細胞個々の微小なシグナルを
認識するだけです。
そのシグナルの種類が数百億種類とか
膨大なタイプが存在するため、
特定のT細胞が、特定の標的細胞を
攻撃する、という現象が起こります。
実際、T細胞が、あるがん細胞を攻撃する
ということは起こるのですが、隣のがん細胞は
もっているシグナルが異なるため、襲いません。

こういうT細胞の性質を考えれば
悪性黒色腫や、腎がんのように
様々な遺伝子変異が存在し、
それらの多くは、細胞表面には
現れてきませんが、たまに、細胞表面にも
影響するものがあると、
「異常細胞」 として認識しやすく
攻撃する可能性が高くなる、と
考えられています。

体内のT細胞には、正常細胞を攻撃するものが
たくさん存在します。
もっとも、T細胞が生まれた段階では
大半のT細胞(キラーT細胞)が
正常細胞を攻撃してしまいます。

これらの大半が、胸腺で、選別を受け
排除されている 「はず」 なのですが、
実際には残ってしまうものも 「多い」
ということのようです。
こういう選別の仕組みがありますので、
純然たる正常細胞よりも
がん細胞になって、遺伝子が不安定になり
変異が蓄積して、如何にも異常細胞という
雰囲気になってくる方が、攻撃してくるT細胞が
増える、と考えられているわけです。
要するに、オプジーボというのは
効果を発揮する「率」自体が
最大でも3割弱な上に
特定のがん種、以外は
あまり期待できない
と考えられるわけです。
ハーセプチンというのは
HER2たんぱく質が標的で
NK細胞とも結合するサイトをもち
NK細胞の攻撃効率を高めます。
作用機序が明確です。
HER2は、がん種を問わず
多くの腫瘍からみつかります。

こういう場合は、積極的に
適応外処方も考慮すべきです。
オプジーボの場合、部位による効果の差が
かなり顕著にみえるため、特定部位を
保険適応とし、保険適応外での処方は
行わない、というのがセオリーです。

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