藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2017年11月12日

  

がん, 免疫

糖質制限のブームは一時のピークを過ぎた感はありますが、まだまだ根強い人気があります。

 

糖尿病の場合は血糖値を高めてしまうことそのものが直ちに疾病につながりますので糖質制限を課すのはわかるのですが、がん患者さんに糖質制限を勧めるケースも目につきます。

 

私どもは株式会社ですし、ANK療法についても実際にどう治療に使うかはお医者さんの裁量権であって会社の方から医師に対して、ああしてこうしてとまあ言うのは自由ですが、医師は会社の言うことを聞く義務はありません。

 

ましてや食事となると会社としては、こんな話をききますけどもご心配でしたら医師にご相談ください、というのが基本スタンスです。

 

医師にしても、がん患者さんの治療中の食事については明らかに医療上問題なものについては指示を出すわけですが普段、何をどう食べるかは基本的には患者さんの自由です。

 

 

とはいえ「がん患者向け糖質制限」についてはあまりにも問題が多いと感じております。

 

糖尿病における糖質制限よりももっと徹底して行うのが基本のようです。

 

そのため極端に痩せてしまい体力がなくなってしまわれる方、それも何週間かの間に一気にガリガリになってしまわれる方などいくらなんでもこれは問題というケースをよくみかけました。

 

糖質を徹底して断つと脂肪を燃焼させるのかというとまず先に「燃やす」のは筋肉です。  脂肪は後です。

 

そのため極端な糖質制限を急激に行うとゲッソリと筋肉が落ちてしまいます。

 

 

食事でがんが治るという手の話は過去には今以上にブームでしたが実際にはそうはいかないわけで、やがてはブームは去るのですが、がん治療としての糖質制限は割と新しいので、ようやくピークを越え、むしろ批判する医師が増えてきたという段階でしょう。

 

 

がんの治療において栄養を断つという考え方はどうしても医師に受け入れられやすいようです。

 

栄養点滴を行った患者さんの腫瘍が一気に憎悪するのをみれば、なるほど如何にがんへの栄養を断つのが大事かと思うのはわかります。

 

ただし、栄養点滴を行うのは一般にがんがかなり進行度合いを高め、ご飯を食べられないほどになったから血管から栄養を補給するわけで、がんが一気に進行するタイミングと重なりがちです。

 

また口から栄養を採るのと、血管に直接栄養を投与するのとでは体内での代謝や分配がまるで異なります。

 

 

がん細胞が栄養を欲しがるのは当たり前ですが、では栄養を断つと当然、正常細胞も栄養を断たれ免疫細胞はどうにも活動できなくなっていきます。

 

たとえばANK療法の点滴を静脈にしますと活性の高いNK細胞はあっという間に血流を通って全身を移動し血管壁の孔から抜け出すなどして腫瘍に殺到します。

点滴後しばらくは末梢血液中のNK細胞は急に減少する傾向があります。 お仕事にでかけるからです。

しばらくすると援軍が方々から集まるのか末梢血液中のNK細胞は逆に増えてきます。

 

点滴後にPET画像を採ると腫瘍に殺到したNK細胞がビッカビカに映ります。

 

活性の高いNK細胞が必要とする糖分は、がん細胞の比ではありません。 圧倒的に大量の糖分を必要とします。 かといって治療中に無理に甘いものを食べる必要はありませんが、糖質制限などをやられてしまうとせっかくの高活性NK細胞も栄養不足となります。

 

糖質制限を徹底するとケトン体がでてきてこれをがん細胞は食べないというのですがNK細胞もケトンは食べないですね。

やっぱり糖分が欲しい、と。

 

そもそも体内のがん細胞は非常に多様です。

 

がん細胞を体外に採りだすと一般に増殖しませんので、研究用に使っているがん細胞は野生型のものとはかけ離れた特殊なものとなります。

それもクローン培養されたものが基本なので単一の性質をもった細胞の集団となっています。

こういうもので実験しても、体内の野生型の多様ながん細胞とはまるで違う生き物を調べたことにしかなりません。

 

がん細胞は正常細胞よりもはるかにバリエーションを増やしていきますので

どんな薬を投与しても、正常細胞は壊滅するのに、がん細胞の中には必ずといっていいほど平気なものがおり、それが耐性をもったまま増殖してきます。

 

試験管の中の大人しい変わり種のがん細胞でいくら実験しても、体内の野生のなんでも喰い生き延び、増殖しようとする悪性度の高いがん細胞が同じということはそうはありません。

環境負荷に対しては正常細胞以上にたくましく対応してきます。

 

たとえば、がん細胞は正常細胞よりも糖分の代謝の効率が悪いと一部の人々に信じられているようですが悪性度を増したがん細胞は大量のリンを抱え込み、リン酸を酸化剤に用いて酸欠下の環境においては正常細胞よりも効率よく糖分を代謝します。 

 

大きな腫瘍をつくれば内部と周辺では環境が違うわけですし血管を導入したかどうかでも環境は変わり腫瘍が血管を呼び込むと周辺の正常組織の環境もかわります。 糖分をどう代謝するかなど環境によって変わるのは当たり前です。

特定の限られた環境下で非常に特殊なクローン培養された実験用のがん細胞で何をどう実験しても複雑で多様な野生のがん細胞集団の環境ごとの挙動を説明するのは無理があります。

 

さてPET画像というものがあります。

 

糖分に放射性物質をつけておきこれが集まったところが画像になるというものです。

 

もし本当にがん細胞が糖分の取り込みが多くPETに必ず映るものであるなら、なぜ日本人全員PET画像をばんばん取りみんな小さな早期がんをみつけて即座に手術で取り除き、誰も進行がんにはならない世の中にならないのでしょう。

 

それは多くのがんはPETに映らないからです。

 

体内の多くの部位では正常細胞が活発に糖分を取り込んでおり、そんなところへがん細胞が紛れていても、PETにはなかなか映りません。

骨転移など正常細胞があまり活動していない領域にがん細胞が進出した場合は、がん細胞だけが糖分を取り込んでいるわけですからPETに何かが映ります。 PETはあくまで周囲と比べて異常に糖分の取り込みが多いところを映像にするのであって、一般に正常組織は腫瘍組織よりも活発に糖分をとりこんでいるためそうそう必ずがん細胞集団が映るというものではないわけです。

 

なのでみんな普段からPETを取りまくろうにはならないわけです。 もちろん被爆リスクもあるのでやみくもに取るものではありませんが、がんの再発や転移が確実と考えられる人でもがんがPETに確実に映る保証はないので闇雲に画像を取ることはしません。

 

 

もうひとつがん患者さんの極端な糖質制限には大きな問題があります。

真っ先に筋肉が燃やされてしまいタンパク質不足に陥りがちです。

すると血液中のアルブミン値が下がってきます。

 

NK細胞に限らないのですが正常細胞もアルブミンは必要なのです。

NK細胞の場合、まったくアルブミンがないと流石に飢餓状態のようになってしまいます。

 

どんなにNK細胞の活性をあげたところでアルブミンや糖分という基本的な栄養が足りなければ戦いにはなりません。

 

 

栄養を送っても断っても温度を上げても下げても何をやっても、がん細胞だけがやられて正常細胞は大丈夫ということはありません。

ましてや大量の栄養を必要とする免疫細胞特に肝心のNK細胞は栄養を断たれると活動しなくなります。

一方のがん細胞は非常に多様であり負荷をかければかけるほど「逞しい」がん細胞が急激に増殖し兵糧攻めを受ければ正常細胞を食べてでも増殖するのですから、がんの一人勝ちになってしまいます。

 

 

基本的には、ちゃんと食べて欲しい

しっかりと栄養を取って欲しい

それも肉や魚、野菜などを料理したもの、つまり「食事」でしっかりと栄養をとっていただきたいのです。

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