藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2018年10月05日

  

がん, 免疫

ノーベル賞を取ったオプジーボとANK療法はどう違うのか、というご質問を頂くのですが、まず受賞したのは薬ではありませんし、「免疫抑制信号を阻害することでがん治療の新しい道を拓く」考え方が高く評価されたのであって特定の薬が高く評価されたのではありません。

 

オプジーボは免疫細胞表面にあるレセプターの一種で抑制信号を受け止めるPD-1に信号が入ることを阻害する薬剤で主にT細胞の活性を高めます。 問題はT細胞はがん細胞だけを狙い打てないため正常細胞も攻撃され自己免疫疾患を発症するリスクが高いことと、そもそも攻撃を受けないがん細胞が多く、奏効する部位が限られています。

ANK療法は体内のNK細胞を摂りだし、体の外で強く刺激することで増強し体内に戻す「細胞医療」と呼ばれるもので「薬」ではありません。NK細胞の活性を2倍程度高める分子標的薬は欧米のがん治療薬の主流になってきましたが、2倍ではまだまだ著効になるケースが限られます。 体の外の「見える」「シンプル」な環境で確実に強力にNK細胞を増強するというのがANK療法の基本的な考え方です。

 

NK細胞はがん細胞を狙い打つことができますので正常細胞が攻撃されて自己免疫疾患を起こすことは原則ありません。 また、「野生型」のNK細胞で活性が高ければ攻撃しないがん細胞はみつかっておらず原則、部位を選びません。

 

「薬」であるオプジーボは承認申請の既存の仕組みに乗せて保険診療になりました。ANK療法は「薬」ではないため承認申請の仕組みがなかったという問題があります。 近年、急速に細胞医療を扱う法整備が進み今後は承認申請が可能になっていきます。

 

両者とも開発者は京都大学の免疫細胞のレセプターを研究するグループにいました。抑制信号を受けるPD-1の発見が薬剤の開発につながり、ANK療法開発者の内の1人は活性化信号を受けるインターロイキン2レセプターの発見者です。

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