藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > 夢の新薬OH-1

2017年05月19日

  

がん, 免疫

2017.5.19.

 

 

 

これまで、数々の「夢の新薬」を

みてきましたが、これこそ特効薬と

騒がれたものに、TNF-α があります。

 

 

その名もずばり、腫瘍壊死因子α型

 

 

この物質を、ふりかけると、

腫瘍が壊死を起こす、名前もそのまんまに

付けられました。

 

 

さて、同じ時期、いや、もっと強力な夢の新薬があると

もてはやされていたのが、「OH-1」です。

 

 

強力な抗腫瘍効果、TNF-αによく似た効果が

あるのですが、どういう構造をしている物質なのか

精製ができなかったのです。

 

そこで、スペースシャトルで分離することになりました。

 

スペースシャトルのメーカーは、当時のマクダネル・ダグラス社

でしたが、前職の企業が、

ダグラス社の主力商品(F15イーグル戦闘機)を

日本のメーカーに、ライセンス供与していた関係で、

スペースシャトルの宇宙利用の権利を確保していたのでした。

 

宇宙空間というより、衛星軌道を巡回していれば、ほとんど重力が

働かないので、地上よりも、はるかに高い分解能で、

大量に分離精製ができます。

 

宇宙でつくるのだから、製造までは、

どこの国の薬事法にも触れない

ただ、輸入承認をどうやってやるとか、という議論が

盛んにおこなわれていました。

 

結局、スペースシャトルの事故により

宇宙で開発された二番目の薬になる可能性があった

OH-1は、地上で開発を進めることになりました。

 

ちなみに、宇宙で1番目に開発されたのは、

シカゴベースのアボット社(今は、武田薬品さんの子会社)

のTCUK という心筋梗塞の薬で、スペースラブの中で

高TCUK産生細胞を分離し、これを地上に持ち帰って

量産していました。 これを前職の会社が、日本の

医薬品メーカーへライセンス供与し、日本第一号の

バイオ医薬品として、製造承認を取得しています。

 

で、なんのことはない、OH-1というのは

TNF-α と 天然型インターフェロンーαが

結合しているもの、ということが明らかになりました。

 

二つの有効成分よりなる新薬の開発、ということで、

これだけで、この薬、ほぼボツになりました。

 

単一成分の薬の承認を取るのも大変なのに

二つの成分となると、じゃあ、それぞれのデータを

集積し、さらに、合わせた場合、じゃ、二つの物質の

比率はどうなのか、考えられる比率ごとにデータを取れ、、、、

などなど。

 

新しいものが登場すると、これをどう、審査するのか

審査そのものより、どういう審査のプロセスとするのか

こちらの方が大変になります。

 

 

一般の方の意識としては、

効果があるなら保険適応になるもの

すればいいじゃないか、というところでしょう。

 

実際には、がん患者さんが何人も助かっていたとしても

そう簡単に、保険適応にはならず、逆に、

この効果は、患者さんにとって本当のどころ

どれだけの意味があるのか、というものでも

「路線」にのっているものは、次々に承認取得

保険適応となっていきます。

 

 

OH-1については、まず、インターフェロンαとして

先に承認を取得し、次に、TNF-αとして承認取得

その後、合わせて、というステップを踏む方が

急がば廻れ、と考えられましたが、インターフェロンαの

開発そのものが難航しました。

 

大量投与により劇的な効果がでるものの副作用も強烈であり

投与量を減らすと、効果がない、いわゆる「コーリーの毒」の

壁が立ちはだかった、と言う問題もありました。

 

それ以上に、インターフェロンαは、主に感染症防御系の

信号伝達物質として機能します。

鼻腔や口腔内の粘膜細胞が、ウイルスに感染すると

微量のインターフェロンαや、βが分泌され

今度は、粘膜細胞の層の中に潜んでいるマクロファージなどの

インターフェロンレセプターが、これを捉えると、

警報が発せられ、粘膜から血液などへ移行した

マクロファージなどが、大量のサイトカイン類を

放出して廻ります。

 

こういうものなので。

 

あんまり、がん細胞には反応しません。

 

腎がんで保険適応をとりましたが

むしろ、ウイルス性肝炎の治療の方へと

関心が向けられていきました。

 

 

そうこうするうちに、TNF-αに重大な問題が露見します。

 

 

(続く)

>>全投稿記事一覧を見る