藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2020年05月02日

  

がん

芸能人の方がご病気で亡くなられると、マスメディアが異常に騒ぎますが、ファンの方々と追悼の何か、というならわかります。ただ医学上の問題をほとんどの場合、不正確にそして大げさに騒ぎ立てることは苦々しく感じております。

 

がんに対する放射線療法によって免疫が下がる、とか、そんなことはないという専門家のコメント、といったものが飛び交っています。 専門家であれば放射線療法によって免疫力の低下を招き、感染症リスクが増大することや再発・転移の場合は進行を速めるリスクがあることを知らないはずはありません。 ただ女優のОさんのことで、不用意に騒ぎすぎると放射線治療を受けるべき進行がん患者さんが放射線療法の実施を怖がって拒否してしまうと命を縮めることになるかもしれませんので、そんなに騒がないで、とか、心配しなくて大丈夫ですよ、というニュアンスで敢えて放射線で免疫が下がらないような雰囲気のご発言をされているのかもしれません。 心配しなくて大丈夫というのは、まあ、嘘といえばウソですが、心配しても意味がありませんから、心配し過ぎる患者さんにどう言うかはむつかしいところです。 

 

たとえばアンサーという商品名の薬があります。製造販売承認を取得し薬価収載されている健康保険が使える薬です。この薬、効能としては「放射線療法により減少する白血球数の回復」です。 ちなみに、この薬と同じ成分のものは世間的には丸山ワクチンという通称で呼びならわされています。がんの治療というよりもがんの治療で低下する感染症免疫を少しでも回復する、というものです。 放射線を体に浴びせれば、それが局所照射であってもダメージは全身の白血球に及びます。 静脈に検出可能な物質を投与して10分もすれば結構、全身に分布していますし、30分もすれば隅々までいきわたっています。体液は素早く循環しているのです。一か所に放射線を照射していても全身を巡る白血球がそこを通る確率は高いのです。また池に石を投げこむと波紋はどこまでも広がり、複雑な形をした池で石を投げた岸から見えないところにまでも波は広がっていきます。回折現象といいますが体内に照射された放射線も回折し、全身の様々な部位に広がっていきます。放射線は波の性質が強いからです。重粒子や陽子線は粒子の性質が強く、波の性質が弱いので回折現象はあまり起こさず、照射した部位に集中的にダメージを与えますので、白血球にそれほど影響を与えません。 私どもは放射線療法を受けられた方のNK活性が低下することは普段みており、がんと闘う腫瘍免疫が放射線療法によって低下することや、放射線療法を受けられた患者さんの血液中のNK細胞は増殖能がよくないことを知っているわけですが、これは非常に特殊な検査をやらないとわからないのことですので放射線の専門家も詳しくはご存じありません。ただ放射線療法をやれば感染症免疫が低下することはよく知られています。また、あまりにも白血球数が低下すれば無菌室に入室してもらって外出禁止になるなど、白血球数の極端な減少=感染症リスクの増大、これはある種の常識です。もっとも抗がん剤投与と比較すれば放射線療法による免疫へのダメージはまだ少なめという印象はあります。

 

とはいえ進行がんの治療を感染症リスクが怖いからと中断してしまうのは本末転倒です。たとえば骨転移が猛烈な痛みを伴う場合、すみやかに放射線を照射することで痛みが和らぎ、骨折するリスクも下がるかもしれませんが、もし新型コロナウイルスが怖いということで放射線治療を先延ばしにすれば、それだけ命が一気に縮むかもしれません。ものごとには優先順位がありますので、どれほど世の中全体が新型コロナウイルス感染で大騒ぎしていても進行がんの治療は待ったなし、速やかに、「今やる」べきものです。 

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