藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2011年05月18日

  

がん, 免疫

2011.5.18.
 
 
 
WT1について、最近よせられた質問がいくつかあり、
ポイントだけ、まとめておきます。
 
 
日本では、何かとメディアへの露出が多くなってきた
がんワクチンですが、ANK免疫細胞療法も免疫だし、
がんワクチンも免疫だし、似たもの同士だと思っている
人が多いんですね、、、、
 
いえ、全然、違うんですけど、と申し上げると
びっくりされる方もいらっしゃいます。
 
何が違うかといって、NK細胞は、がん細胞を認識し
目の前で、がん細胞を始末してくれます。
一方、がんワクチンが、がん細胞を攻撃するという
確たる証拠は今のところありません。
 
 
「あんなのと、一緒にしないでよ!!!」 
NK細胞が聞いたら、そう怒るでしょうね。
 
 
WT1が、ほんとうに、がん抗原として有用ならば、
なぜ、誰も、WT1を標的にする抗体医薬品をつくらない
のでしょうか。 診断にもつかえるはずですね。
アイソトープをつけた抗体を体内に投与すれば、
WT1を発現するがん細胞に抗体が集まるはずです。
 
欧米では、盛んに抗体医薬品が開発されていますが
その中に、「がん抗原」を標的とするものは
一つもありません。
 
そもそも、正常細胞の中にもWT1はあるのです。
がん細胞は、正常細胞より遥かに大量のWT1を発現する、
そして過剰発現された細胞内タンパク質の分解物が
細胞表面にもディスプレーされるのである、
よって、正常細胞でも、がん細胞でも、細胞内には
WT1は存在するけども、細胞表面にディスプレーされるのは
がん細胞だけなのである、という理屈ですね。
 
ところがです。
 
正常細胞の方ががん細胞より圧倒的に数が多く
また、圧倒的に増殖が速く、日々、生まれては
死んでいく正常細胞は、たまにしか死なない、がん細胞より
比較にならないほど多いのです。
そして、死んでバラバラになっていく膨大な数の正常細胞由来の
総量として膨大なWT1タンパクやその断片ペプチドが免疫細胞によって
捕捉されているのです。
免疫システムにとって、ごくありふれた通常物質WT1。
それなのに、がん細胞表面に、チビリとディスプレーされた
ペプチドを、「がんの目印」だと認識するでしょうか。
 
今のところ、WT1で刺激したキラーT細胞を、
がん細胞と一緒にしても、攻撃してくれないのです。
もちろん、生きたがん細胞と、キラーT細胞を一緒に
培養していると、自然と、目の前のがん細胞を攻撃する
CTLが増えてきますから、WT1を使うことで、
「自然な」CTLの増殖より、効率よくCTLを誘導できることを
証明しないと、WT1の有効性を示すことになりませんが、
今のところ、なるほど、WT1を標的にすることで、
「ほんとうに」がん細胞を攻撃するCTLが誘導された
という話はないのです。 WT1と一緒にアジュバンドとして
免疫刺激物質を加えると、何らかの抗腫瘍効果は
でますが、アジュバンド単独でも、何らかの効果は
でますので、WT1を加えたことによる「効果」の
証拠は、今のところ、見当たりません。
 
え? 新聞に、CTL誘導に成功した、と書いてあった。
 
ですから、そのCTLは、がん細胞を「殺す」ことを確認していない
はずです。  WT1刺激に対して、インターフェロンを放出したら
あっ! CTLだ!! というようにする研究者が増えてきたのです。
CTLの「C」 は、Cytotoxic = 細胞傷害性 という意味ですから
ちゃんと、目の前で、がん細胞を「傷害」してくれないと
CTLと呼んではいけないはずなのに、最近では、傷害することを
確認せずに、CTLができた! と言ってしまう人たちが増えているのです。
 
 
 
 
 
 

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