藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2011年10月20日

  

がん, くすり

2011.10.20.
 
 
現在、欧米を中心に開発中の分子標的薬が
いくつ存在するのか、数え方によって数字が
変わりますから、単純にいくつ、とはいえませんが、
たとえばCD20という細胞表面物質を
標的とする抗体医薬品について、
現在、世界で臨床試験中の品目が、20品目あります。
世界で、というと、いろんな国がありますから、
多少、数字が違っているのかもしれませんが、
ともかく、同じ標的物質を対象とする医薬品が
いくつも開発中ということです。
 
既に、商品名リツキサン(通常、出版物などでは
物質名で表記しますが、舌を噛みそうな名前なので
商品名で書かせていただきます)が上市されて
いますが、B細胞表面に発現するCD20を標的として
結合する抗体で、高いCDC活性をもちます。
 
CDCとか、CDCC活性と呼ばれるものは、
体内の炎症システムである「補体」を活性化させるものです。
つまり、体内には、普段から「炎症爆弾」のようなものが
存在し、抗体のもつCDC活性など、「信管」が働くと
炎症反応が起こる、という仕組みです。
 
CD20という物質は、悪性リンパ腫B型を適応としています。
B細胞由来のリンパ腫であれば、正常なB細胞がもつCD20を
やはりもっている、ということで、これを標的としています。
もちろん、正常なB細胞にも抗体が結合してしまいます。
 
 
中和抗体であれば、結合することで直ちに標的細胞を破壊、
とはなりませんが、CDC活性の強い抗体の場合、標的細胞の
周辺で補体反応が起こり、標的細胞は
炎症反応にやられてしまいます。
 
 
結局、リンパ腫細胞も、正常なB細胞もやられることになります。
 
 
現在、CDCよりもADCC活性の強い抗体で、しかもADCC活性を
高めるポテリジェント加工や、手法は別でも、ポテリジェントと同様の
ADCC増強効果をもつ抗体が次々に開発中です。
 
これなら、正常なB細胞への打撃も抑え、体内のNK細胞の
活性が残っていれば、ADCC活性の発揮も期待されますが、
逆に体内のNK活性が低い場合、がん細胞を攻撃するパワーが
不足するということになります。
 
 
ところで、CD20抗体が分子標的薬になるなら、なぜもっと
大量の抗CD〇〇抗体が、続々と開発されていかないのでしょうか。
 
 
CD19、CD21、CD22、、、  様々な標的物質に対する抗体が
実際に、試されたのですが、うまくいかないのです。
というより、CD20以外のものもかたっぱしからためされたのですが
ほぼ失敗に終わりました。
 
細胞表面に「浮かんでいる」抗原物質を
標的に、抗体を結合させると、たちどころに、
細胞内に取り込まれてしまいます。
 
抗原と抗体が結合した抗原抗体複合体は、細胞に取り込まれ易い性質があります。
 
次々と試された標的物質は、抗体が結合するや、どんどん抗体ごと細胞内に
取り込まれていきました。 これでは、CDC活性もADCC活性も役に立ちません。
 
こうして、CD20以外の候補物質は、脱落していったのです。
 
 
今日では、この抗原抗体複合体取り込みを逆手に利用し、抗体に細胞傷害性物質を
結合させ、一緒に細胞内に取り込ませる手法も開発が進んでいます。
 
抗CD20抗体が製品として生き残った最大のポイントは、標的抗原と抗体が
結合しても、細胞内に取り込まれにくかった、ということです。
全く、取り込まれないのではなく、継続使用していると、やがて、
細胞の方でも、抗原抗体複合体を取り込んでいくようになります。
ただ、そうなるまでの期間が、他の標的より長かったわけです。
 
 
膜貫通型と呼ばれる細胞表面たんぱく質の中に、細胞外の部分で、
細胞増殖因子を受け取り、今度は、細胞内の増殖信号伝達を
ひきおこす細胞増殖関連のレセプターというものがあります。
この場合は、抗体が結合しても
直ちに細胞内にとりこまれてなくなってしまう、ということはないようです。
もし、そうなっても、細胞増殖関連レセプターが消えるのであれば、
がん細胞の増殖ペースが落ちるので、それはそれで好都合です。
 
がん細胞の増殖を抑えるという効果を狙える上、抗体が結合しても
取り込まれにくい、こうした理由により、今日の抗体医薬品(抗がん剤としての)
の開発は、CD20の他は、概ね、細胞増殖に関連するレセプターを
標的とするものに集中しています。
 
 
 
 
 
 
 

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