藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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TOP > なぜサバ缶がいいのか

2018年12月30日

  

えとせとら

サバ缶の大人気が続いていますが、他の魚ではだめなのでしょうか。

 

これがなかなか、ないのです。

 

EPAやDHAを大量に生み出す海洋性プランクトンは黒潮が日本に接近する領域で大量発生します。これを食べる黒潮に乗って回遊する魚と、その魚を食べる魚が体内に蓄えつづけ、三陸沖に達するころに最も大量にEPAやDHAを抱え込むことになります。 近海性のタイやスズキ、ヒラメ、ましてや淡水生のアユやコイではEPAやDHAの含量が少なくなります。 世界中を見渡しても、日本の沖合の黒潮を回遊する魚はだんとつでEPAやDHAを多く含んでいます。

 

プランクトンを食べるイワシ、サンマ、ニシンは、あまり刺身には向きませんが、死後直ちに酸化が進み、すぐに食べないと腐臭が強くなります。EPAやDHAは大気中では、あっという間に酸化され、過酸化EPAやDHAは基本的に有害ですので、私たちは不快な臭いに感じます。 イワシを仮死状態にして空気で膨らませた風船のような容器で運ぶ技術が実用化され、これを都内の「イワシ屋」さんというチェーン店や西友グループのスーパーに納め、当初は話題先行でお客さんが集まったのですが、イワシに限らず活けの魚はあまり味がないので人気はすたれていきました。水槽で運ぶと運送中に魚が傷む可能性があるのと大量の水を運ぶわけですから輸送コストがかさみます。魚密度といいますが魚を入れた水の体積に対して魚自身の体積の合計が10%を超えるとかなりの密集となり通常、魚が放出するアンモニアで魚が弱っていき、短時間で死んでしまいますが、アンモニア等、水中の窒素成分を除去するのは技術的に難しいのです。 水を使わない生きた魚の輸送は画期的ではありますので当時、事業の可能性を大きく感じたのですが、やってみると意外なところでひっかかるものです。

 

イワシの缶詰もありますが、こうした小型の魚の鱗や頭、内臓を取り、手早く真空加熱というのはできなくはないですが、面倒です。ホタテはEPAはそれほどでなくてもDHAはイワシ以上に大量にもっています。ただしウロにはカドミウムが生物濃縮で蓄積されているので、貝柱だけを切りだし真空加熱した缶詰を売っています。 これでもいいのですが、大きな貝を手作業で捌いて、小さな貝柱がとれるだけですからどうしてもコストが高くなり、一缶500円よりも高くなりがちです。  イワシから精製された魚油にはEPAやDHAが大量に含まれていますが、濃度が高すぎ、あっという間に酸化されます。カプセルに詰めても酸化が進み、どんどんカプセルのゼラチンの厚みが厚くなってきましたが、どうやっても、酸化は進みます。

 

クロマグロは頭に大量のDHAを蓄えていますし、身にもEPAやDHAを多く含みますが、値段が値段だけに、刺身にして流通させるもの、となります。びんちょうやきはだマグロは「ツナフレーク」にされてきました。あれをぶつ切りにすると骨が硬すぎます。 蒸気で蒸して、EPAやDHAは酸化されますが、傷んだ油はドレインとして垂れ流し、せっかくの栄養価の高いオイルを捨ててしまうのですが、さばきやすくなった身を骨からほぐしてフレークにします。 蛋白源としてはまだまだ価値があります。 その気になれば、ある程度、身を削いで素早く真空加熱して缶詰にし、残りの面倒なところは従来製法でフレークにしてしまえば成り立ちますが、タイやマレーシアなどに点在するツナフレークの工場は巨大であり、一度、フレークビジネスとして定着したものを、安易に真空加熱にシフトすることはできないのでしょう。少なくとも陸揚げされた魚を加工するという前提ですから酸化した油を捨てる現行のフレーク事業の方が陸上巨大施設には向いています。

 

サケも回遊してきますが、産卵しようと筋肉を増やし、今度は餌を食べなくなって筋肉を分解し卵や白子を大量につくるので、あまり脂をもっていません。 逆に酸化しにくいので刺身や切り身で流通させることもフレークにすることも容易です。 ウナギも回遊してきますし、真空加熱品もあるのですが、値段が値段だけに、EPAやDHAを補充するために日々食べるものにはなりにくいです。

 

ということで、サバがちょうどいいわけです。 

 

 

日本付近の黒潮は特殊です。太平洋の真ん中には案外、生き物がいないのですが、餌になるプランクトンが少ないからです。 地球上の生物の大半は珪藻ですが、字の通り珪素を必要とし、陸地から流れてくる土、つまり二酸化珪素の補給がないと大量発生できません。 日本列島は雨が多く、急峻な地形を流れる河川が大量の二酸化珪素を海に運び出しますが、世界最大の海流である黒潮が慶良間列島の島と島の間の細い回廊を通過後、1000メートル以上の崖を一気に落ち込んでいく際に海の中に巨大な滝が何本も並んでいる状況になります。加速した流れと速度の遅い流れの間に渦ができ、黒潮が蛇行しながら渦が海底の堆積物を舞い上げるので黒潮はにわかに陸からの二酸化珪素の恩恵にあずかり、大量の生き物を育みます。 珪藻は葉緑素をもつ植物性プランクトンですが、分厚い二酸化珪素の殻を通して葉緑素をみると茶色っぽくみえます。 これをカイアシなどの動物性プランクトンが食べ、更にカイアシなどをイワシなどが食べます。

 

カイアシって、こんな感じ ↓  近海の海水を掬い取って顕微鏡でみると必ずいます。

http://plankton.image.coocan.jp/Crustacea2-1-010.html

 

EPAやDHAは私たちの体をつくる物質の一種です。 これがないと体がまともにつくられません。どうしても必要なものです。 特に神経には大量に必要です。 それが海洋性プランクトンしかつくらないんだ、とされてきました。 実際には、マサイ族の中には牛しか食さないグループがおり、その牛は海のものをまったく食べないのですから、どう考えてもEPAやDHAの補給源が海洋性プランクトン以外にもあるはずですが、日本沖合の黒潮付近でとれる魚に大量に含まれることは事実で、サバ缶はまあ、妥当な製品と考えられます。

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