藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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2020年04月24日

  

えとせとら

米国政府が気温の上昇、強い陽差し、高い湿度、この条件が揃うと新型コロナウイルスは効率よく失活すると発表しました。前々から言われていたことですが、それは多くのウイルスにおける「経験則」から類推したもので今回は実験結果を踏まえてのものです。 もちろん実験といっても現実と同じ環境を再現することはできず(街中の人々に実際に感染させてみる、それはさすがにできません)、細胞を使ったり、実験動物を使ったりする現実とはかなり異なる状況でデータをとるほかありません。 それでも他の条件が同じなら温度や陽差しや湿度で失活速度がどう変わるかを比較することはできます。

 

春になって気温が上昇すれば流行は収まるだろうと、当初の観測ははずれてしまったわけですが、その後、インフルエンザウイルスよりは温度上昇に耐えそうだ、ただノロウイルスよりはずいぶん弱い、といった報告が続いていました。

 

一方、気温が高く日差しが強いシンガポールでも感染者数は少なくないという指摘もあります。

 

 

中国以外の国でも感染者が発見され始めたころ、やはり熱帯地域での感染者数は明らかに少なく、なぜか赤道地域にあるシンガポールが突出して感染者数が多いと報告されていました。ちょうど2月の後半、シンガポールへ行ってきたのですが当時、まだ日本ではそれほど日常生活に大きな支障はでておらず、武漢へ支援の物資が贈られたり、クルーズ船のニュースが毎日繰り返し流れていた時期です。当地では至るところで非接触式の体温計をもった人々がおり、毎日数えきれないほど何度も検温されました。シンガポール政府の出足は非常に早かったのです。訪問予定の大きな病院や地元バイオ企業は丁度、検査キットの臨床試験を始め、治療薬の選定作業も進んでいました。対応力がまるで違うため、感染者を網羅する率も高いと考えられます。重症者は入院、軽症者は自宅待機と当初から明確な指示がでていましたので検査を受けない軽症者は多いのでしょうが、何か症状があればたちどころに対応する仕組みになっていたようです。

 

現地へいけばすぐにわかりますが、この国だと感染が広がりやすいだろう、と。小さな島で丘のようなものはありますが全島ほとんど市街化され、車で方々走り回ってもいたるところにビルが建っています。アラブ系の町には中東でよくあるスーク(市場)のミニ版があり、所せましと店が密集し商品の隙間を縫ってショッピングに練り歩いているほか、広東料理系の店が集中するフードコートなどは大勢の人が密集します。こういう場所以外はあまり外を歩く人の数は多くなく、ビルの中には沢山の人が集まります。 そしてなんでここまでクーラーを使うのかと寒いほど空調されています。この国の一人当たりの電気使用量の統計は調べてませんが、相当使っているのでは? そして基本的に広東系ですから狭い店先やテーブルに密集してワイワイガヤガヤ、長時間しゃべりながら大皿の料理を取り分けて食事を楽しみます。猛烈にクーラーがきいている部屋でです。 あそこまで極端だと真夏でも冬に流行する感染症が広がるのではないでしょうか。

 

さて、ウイルスがなぜ温度や紫外線、湿度によって失活効率が異なるのでしょうか。正確にはわかりません。ウイルスは生き物ではなく、もちろん菌ではありません。単純な化学物質であり、それも非常に安定な物質です。シベリアの湖の水を調べれば、過去、人間界で流行したすべてのインフルエンザウイルスのマイナーチェンジ版の型が一通り揃ってみつかります。インフルエンザウイルスは鴨の体内では非常に安定ですので、人間の体の中で変化しても鴨に戻ってくるとその変異をずっといつまでも保存していますし、水中に排泄されたウイルスもいつまでも安定です。ウイルスが水に弱いわけではない、それは水の塊である人体内で増殖するのですから当たり前です。40度Cを超える熱がでてもウイルスは暴れているわけですから、多少の高温でも平気なことも自明です。湿度や温度そのものではウイルスは安定、ではなぜ、人工的な感染系で実験すると温度上昇、湿度上昇、これに日差しなどを加えると急速に失活するのでしょうか。 こういうところは実際のところ正確にはわからないのです。あくまで推測されているのは飛沫核の構造が崩れるので密集していて感染しやすい状態から、ウイルスがバラバラに分散して感染しにくくなる、という考え方があります。 ウイルスは100個や1000個が粘膜細胞にとりついたくらいでは感染しません。数千個で感染するのはエボラのような非常に感染力が強いウイルスであり、通常はもっとドデッとまとまった数が同時に接触しないと感染しません。大きな飛沫核にドカッとウイルスが密集している状態から飛沫核がばらけたら感染しにくくなると「考える」ことは妥当かもしれません。(実験で証明するのはむつかしいですが) 太陽光に含まれる紫外線は強い化学反応作用があり、これはすぐに実験できますし、私もやったことがありますが、DNAの鎖に紫外線をわずかに照射するだけでチミンダイマーというのが形成されます。AGCTの4種類の塩基が鎖状に並んでいるわけですが、TとTが続いて並んでいる場合、紫外線によって両者が結合してしまい、遺伝子として正常に機能しなくなります。新型コロナウイルスはRNAウイルスですのでチミン(T)はないのですが、C(シトシン)が代わりに存在し、Tほどではありませんが、やはりC同士が隣に並んでいる場合は紫外線でダイマーを形成します。紫外線は少しガラスで遮るだけでほとんど化学的な作用がなくなってしまいますが、ガラス窓を通さずに太陽光にウイルスが晒された場合はウイルスゲノムのRNAが紫外線によってダメージを受ける可能性はあります。ゲノムを保護するたんぱく質が紫外線を吸収するとか、飛沫核粒子が紫外線を分散させるということはありますが、完全に遮断することはありません。特に紫外線が照射された際に水があると効率よくダイマー化反応が進みます。また化学反応ですから温度が高いほど反応効率はよくなります。 紫外線有力説は当初からありましたが十分考えられることです。かといって室内を紫外線照射しまくると目も皮膚もやられてしまいますのでそれはやり過ぎです

 

また、ウイルス分解酵素も温度が高いほど、湿度が多いほど活性が高くなります。

 

ただしノロウイルスでは真夏でも関係なく流行しますし、ロタウイルスはもっと強力です。 これらのウイルスはたんぱく質の外側に細胞膜と同様の成分でできたリン脂質の二重膜をもたないタイプのウイルスですが、リン脂質の膜の耐熱性などが関係するのか、、、 ここまでくると厳密に現実と同じ実験系は組めませんしウイルスを直接見ながら実験することもできませんので正確にはわからないのです。

 

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