藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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TOP > 米国基礎研究事情(6) メッセンジャーの実像

2009年03月22日

  

えとせとら

2009.3.22.
 
 
エイズが、人類にとって重大な脅威として喧伝された頃、
メッセンジャーに「指名」されたのは、
キャサリン・ズーン氏でした。
 
神の言葉を預かり、人々に語るのは、文字通り、
「預言」者ですが、この場合、「人」の意向を
人に伝えるので、メッセンジャーと呼ぶべきでしょう。
ですが、預言者っぽく、振舞うことで、人々に
強くメッセージを浸透させていくのが、欧米流儀です。
 
胎児プロジェクトのメッセンジャー(この人は現役続投中)、
ダイアナ・ビアンキ妃の場合、「ビアンキ」が言った、
「ビアンキ」の考え方は、、、 と、ファミリーネームが
使われますが、キャサリン・ズーンの場合は、
キャシー・ズーン、という呼び方でした。
どう呼ぶのが、人々の意識に残るか、徹底的に
検討されるのです。
 
キャシー・ズーンは、FDAのエイズ担当官ですが、
長官でも何でもありません。 いわゆる、代表権はなく、
自分で勝手に意思決定する権限はないのですが、
あらゆるメディアに、キャシー・ズーンの名前とその言葉が
引用され、彼女の言葉が、真実であるが如く、印象づけ
られていきます。 NIHのメッセンジャーはナンシー氏
(やっぱり女性なのです)、CDC(米国疾病管理センター、
感染症分野では、最大の研究機関で、
世界で最も権威があります)の
メッセンジャーも女性でした。
 
ちなみに、CDCは、南北戦争の戦後に、アフリカから連行した
黒人達の間に、マラリアが流行していたので、マラリア対策センター
として、南部連合最大の都市、ジョージア州アトランタに設立されました。 
その後、米軍が侵攻する可能性のある地域(つまり、全世界)に
流行する疫病を徹底的に調査し、対策を講じるセンターとなります。
今日では、疫病といえば、CDCが、どう言ったか、が、圧倒的な
影響力をもちます。 アトランタには、第二次大戦後、
世界最大の生物兵器研究所フォート・ディトリック(ディートリッヒ)も
建設され、今日のフレデリック研究所(米国腫瘍研究所)となっています。
 
キャシー・ズーンは、メタボでは出世できなくなった米国社会の中で、
最期のメタボ・エリートかもしれません。(こんなこと、米国で言ったら、
即、セクハラでアウトです) 美しい、かというと、、 ま、ど迫力がありましたね。
 
脇の甘い人だと思っておりました。
学会でも、国際会議でも、いつも男性弁護士とご一緒。
ホテルの部屋まで、一緒。 
新米さんの私は、あれだけ世界のメディアから注目を
集めているのだから、もう少し、用心すればいいのに、、、
と思ってしまったものです。 
「役割を演じている」間は、公然と、何をやっても大丈夫。
この世界の流儀を知らなかったのでした。
もっとも、役割を降りたり、終わったりすると、
突然、過去のスキャンダルが噴いて出ます。
今から思えば、あれも実はジェスチャーだったのか、、、と。
誰もが考えた訳です。
エイズ絡みで、FDAの認可をとるには、あの弁護士を
コンサルティングに起用すれば、、、
実際、エイズの治療薬を開発中のバイオベンチャー企業が、
件の弁護士先生を起用し、とりあえず、他のウィルス病を適用に
NDA(新医薬品製造承認)を取得したのでした。
この会社を買収する意向をもった日本の医薬品メーカーから
一緒に来て欲しいと頼まれ、デューディリジェンス、というものを
実施し、プラントの実査も行いました。
流石、弁護士先生のパワーが効いたのか、
 
「これのどこが、GMP適合なんや、、、?!?!?!」
 
これで、よくFDAの承認が取れたものだ、と。
増設工事で、埃の舞う工場内を、人の血液が大量に入った
車輪付きドンがらタンクを、人が手で押して運んでいます。
床がデコボコなので、血液がチャッポンチャッポンして、跳ね飛びそうです。
 
一応、質問してみました。
 
「あの。埃が混入する高い可能性がある、と、思うんですが、、、」
 
「ええ、よく質問されますが、精製プロセスにおいて、異物は除去されることを
プロセスバリデーションによって、証明しています。それに、多少、異物の刺激が
あった方が、サイトカインの産生も高くなると考えています。何か問題でも?」
 
日本の医薬品メーカーは、GMP、特に製剤のGMPを、「ゴミが入っては駄目なんだ」
と解釈します。 米国の医薬品メーカーは、「ゴミは入るものなんだ。 入っても問題ない
ことを証明していればいい」、と考えます。
 
 
さて、キャシー・ズーンのオリジナルなアイディアではないのですが、
エイズとは、CD4カウントが、1000を切ったら、発症したと定義するんだ、
抗エイズ薬の承認は、CD4カウントを上昇させることをもって判断基準とする、
とか、その後のエイズ治療を大混乱に陥れる「価値判断の基準」を広めて
しまいます。 
 
薬は、見事に効果あったんだよ、CD4カウントが200も上昇したからね。
え、 患者さん? いや、確か、合併症で亡くなったと思うけど。
 
そして、エイズの予防効果がないどころか、むしろ感染を促進
してしまうエイズワクチンの開発に血道をあげさせます。
 
 
エイズ と がん。
 
一見、あまり関連がないように見える二つの病気。
 
ところが、「対策」の考え方には、共通のものがあります。
 
抗エイズ薬も、核酸調味料の一部を化学変化させたものです。
エイズウィルスが増殖する際に、障害を起こします。
がんの化学療法剤と構造も原理も、そして副作用も、
よく似ているのです。 
 
 
化学療法剤が、
 
がんを全滅させることはない、
また、親玉のがん幹細胞を殺せない、
 
のと同様、抗エイズ薬もまた、
 
エイズウィルスを全滅させることはできない、
元型(c-DNAといいます)を潰せないので、
エイズは再生され続ける
 
 
そして、効かない証明の山を延々と築きながら、
今もなお、エイズワクチンの開発が続けられています。
エイズはウィルスですから、人の細胞にはない物質も
もってますし、逆転写酵素という人の細胞には存在しない
活性をもつ酵素ももっています。 
がんに比べれば、人の正常細胞との明確な違いがあるのですが、
それでも、ワクチンはさっぱり効果をあげません。
(いわんや、がん、をや) 
 
「抗原物質を投与すれば、予防ができる」
 
というワクチン開発の歴史を無視した、誤った信仰が蔓延しているので、
いくら失敗しても、懲りずに、ワクチン開発は継続され、現時点でも、
30以上の開発プログロムが進行中です。
 
挙句、ワクチンで、治療ができる、と考える研究者も後を絶ちません。
ウィルス感染してからワクチンうって、何の意味があるのでしょう。
 
よし、ワクチンだ! 抗原を投与するんだ! という流儀が確立してしまうと、
中身をよく考えずに、ワクチン開発に人材と資金が投入され続けるのです。
 
がんという、分野が異なる領域であっても、「考え方」は飛び火してきます。
エイズワクチン開発は、30プログラムどころではなく、かつては数百プログラムが
同時に進行していました。 この人達、今度は、がんワクチンを開発しようとするのです。

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