藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHP(リンクをお願いします)をご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > アビガンを使うなら混合診療規制適用除外措置を

2020年04月06日

  

くすり

アビガンの増産という方針はいいのですが、とりあえず治験を計画中の海外への供給ということ以外は投与するのかどうか、するならどうするのか、そのあたりはまだ曖昧です。治験を通常通りのプロセスでやっていたのでは時間がかかり過ぎますが、国によっては迅速簡易版も可能ですので、すぐできるところですぐにやってみた結果を見ようということでしょう。国内適応拡大の承認から薬価収載まで通常にやっていたのではまず保険収載のころにはこの騒動は終わっているか、少なくとも落ち着いているでしょう。すぐに使うなら保険適応外使用ということになります。

 

新薬の開発は急ピッチで進んでいますが、すぐ使うことができるのは既存の承認済薬の保険適応外処方です。効くか効かないか以前の問題で、現時点で承認されていないものは何か他の法的措置をとらないと使えませんし、治験を始める前の段階のプロセスが必要となりますので、まず使えるものの中から候補を絞るのは緊急対応としてはそれしかない妥当な行動ということです。 

 

ただしアビガンは抗インフルエンザ薬であって、コロナウイルスに対する適応を取得していませんので、自由診療として保険適応外処方すること自体は医師法に基き、医師の判断と責任において合法的に可能ですが、これを新型コロナウイルス患者を保険診療で治療している医療機関がいきなりやってしまうと混合診療規制違反になります。保険診療と自由診療を同一患者の同一疾病に対して同一医療機関が両方提供すると違法、どちらかだけなら適法です。 ですので、本件に関して混合診療規制を適用しないとの措置が必要です。そもそも混合診療規制は明確な法律による定めも定義も細則もなく、法解釈 + 最高裁判例により法的根拠ありとなっているものです。最高裁判例は法律と同様の効力を発揮しますので規制そのものは法的根拠ありです。それを勝手に無視するのはよろしくありません。緊急事態だから何をやってもいいというのは非常に危険な方向に発展する可能性があります。ただし、混合診療規制はそもそも規制の存在の是非自体が議論されてきたもので、今回特例として適用除外とすることに反対する勢力はいない、あるいは誰も傷つかないのではないでしょうか。あくまで反対という人はいないのでは?

 

混合診療規制の運用は自治体に任せられていますから、国は厚労省課長通知等でガイドライン的なものを示し、東京都なら小池知事がこの件については適用除外とする、と声明を出せば、東京都でアビガンを処方した保険診療機関が混合診療規制違反で摘発されることはないでしょう。 これはあくまでアビガンを新型コロナウイルス感染に使用することが是とする場合の話です。

 

当然ながらアビガンが有効かどうかという問題があります。インフルエンザもコロナウイルスもどちらも一本鎖のRNAウイルスであり、アビガンがRNAポリメラーゼインヒビター(RNAの鎖をつないでいく酵素を邪魔する薬)なんだから、コロナウイルスにも効くのでは、という推論があるわけです。ところがコロナウイルスは一本鎖であっても(+)鎖、インフルエンザは(-)鎖です。どっちであってもRNAを鋳型にRNA鎖を合成すれば同じではないのかというと微妙に違うのです。 実際に効果があるかどうかは実際に使ってみないことにはわかりませんが、原理的には少し無理筋なところがあります。

 

別の問題もあります。現在、とんでもないパンデミックな状況が発生したと世界中が大騒ぎをしているわけですが、現時点でも毎年大流行するインフルエンザの被害をはるかに下回っています。規制による経済的な被害は甚大ですが、感染者数や死亡者数は代表的ないくつかの感染症よりはるかに規模が小さいものです。 何より高病原性インフルエンザの流行が発生すると、こんなものではすみません。アビガンは本来、高病原性インフルエンザの流行発生に備えて世界各国が国策として備蓄しておくべきものです。病状が進行してからよりも感染直後か直前に処方するのが効果がでやすく、流行発生後、ある時点で、一斉に医療従事者やライフラインの維持に必要な人員に投与するべきものです。それを今、不用意に使ってしまうと、アビガンに耐性をもつインフルエンザウイルスを増やすことになりかねず、これが高病原性インフルエンザウイルスと遺伝子交換をするとたちどころに薬が効かない高病原性インフルエンザウイルスが猛烈に拡散することにつながります。発生するかどうかわからない将来のリスクより今、目の前にある危機という考え方はわかるのですが、高病原性インフルエンザの脅威は新型コロナウイルスどころではないのでアビガン増産→備蓄増まではどんどん進めていいのですが、使う際には慎重を期すべきです。もっとも高病原性インフルエンザについては、インフルエンザの人間界への伝播ルートを解明し、高病原性の型が最低3つあり、これがやがて人間界に流行するリスクに警鐘を鳴らされた喜田先生ご自身が、そういう可能性は「低い」とおっしゃっています。「ない」とはおっしゃってませんが。 この問題については別の機会に。

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