藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > インフルエンザ薬「ゾフルーザ」耐性ウイルス感染拡大

2019年11月28日

  

くすり

インフルエンザ薬「ゾフルーザ」に耐性をもつウイルスが広がっていると大きな騒ぎになっています。

 

まず「耐性ウイルス」という言い方は正確ではありません。他に言いようがないのと専門家もそうおっしゃってますからまあここはしょうがないかと思いますが、そもそもゾフルーザであれ他の抗インフルエンザ薬であれ、多少は進行を遅らせることができるかどうか、という効果を狙うもので初めからウイルスを排除する作用はありませんし全く効果がないことも多いわけです。「耐性ウイルス」という言い方をすると「通常は薬を飲めばウイルスは消滅しすぐ治り、耐性ウイルスが出現すると薬が効かなくなってしまう」というイメージをもたれてしまうかもしれません。 抗ウイルス薬の場合の耐性というのはあくまで「より効かなくなった」という程度問題ということになります。 

 

とはいえやはり耐性ウイルスしか言いようがありませんので耐性ウイルスと書かせていただきますが、インフルエンザの治療薬は使えば使うほど「より早く」「より強い」耐性をもったウイルスが広がるのが「当たり前」です。今更なにを騒いでいるのか?という感じです。 ゾフルーザが承認されるや一気に既存薬を追い越し爆発的に売り上げが伸びましたがそれは医学的な根拠は関係なくあくまで算術の問題です。そして当初からこんなに大量に使ったら速やかに耐性ウイルスが広がるという警鐘を鳴らす声はほうぼうから上がっていました。専門家でなくてもメディアの方でもアラートを鳴らしておられた方はいらっしゃいました。 そしてまたまた何度も繰り返してきた同じことが起こっているわけです。 タミフルもリレンザも「風邪クスリ」として開発されたのではなくパンデミックフルー対策として、そしてインフルエンザを治すことはあきらめて少しでも感染の伝播速度を遅くし対策をたてる時間を稼ぐために開発されたものです。こうした薬でインフルエンザが治ることはありません。感染する前にのんでおくと感染しにくくなったり進行が遅くなったりすることがあります。疫病というのは爆発的なスピードで広がると壊滅的なことになりかねません。文明が進歩したと人類は思っているわけですが、人類の体力なり病気に対する抵抗力は落ちており、何より高速で大量に人や物が移動しまくっていますからひとたびパンデミックが発生したら大変なことになります。 そのために感染拡大に少しブレーキをかける薬を大量備蓄しておきもし発生となったら世界中一斉にみんなのむ、そういう薬です。 タミフルが承認された当初、日本の備蓄量は世界のコンマ何%程度、使用量は世界の8割以上でした。 本来の使い方を無視してタミフル耐性ウイルスを早々に広め今では世界中にタミフル耐性ウイルスが蔓延しています。今、パンデミックが発生したらタミフルは当初の期待ほど役にたたないということです。 ゾフルーザが登場したら使わないで備蓄しておくべきでした。 もう遅いですが。 一度、流行した耐性ウイルスは再びシベリアの野生の鴨に戻りそこで安定的にずっと保存され続けます。薬の使用をやめてももう耐性ウイルスの種はたくさん自然界に保存されてしまったのです。それがいつパンデミックを起こす高病原性インフルエンザとゲノム交換を行い、人間界に襲い掛かってきてもおかしくありません。

 

疫病対策は国どころか世界中が共通認識のもと強力なイニシアティブをもって推進しないと意味がないものですが、国内の安易なウイルス薬の処方については、「保険診療だからもっと責任をもって行う」という意識の徹底が肝要と考えます。自由診療というのは患者サイドが費用負担するわけですからわけのわからないウイルスを使う治療を野放しにするのはよろしくなく、安全性については非常にシビアにみていくべきですが、そうした一部の例外を除けば、自由診療の批判をするエネルギーはもっと保険診療に向けるべきです。国民全体のお金を使っているのですから。そして大きな問題は「ゾフルーザ」は「国が認めている」&「エビデンスがある」さらに何より「薬価がついている」です。  なので「考えないで」無秩序に大量投与が行われ、しかも高い薬価がついているほど一層大量に投与されることになります。 儲かりますから。 結果が耐性ウイルスの早期拡大であり、また一つパンデミック対策の武器がなまくらになってしまったのです。 エビデンスというのはあくまで製造事業者の都合で特定のデータを積み上げたものです。その特定のデータを国は特定の専門家に諮問し、ハンコを押した、これが「国が認めている」実態です。耐性ウイルス早期発生のエビデンスは大量投与してはじめてデータ化されるもので承認前は大量投与しないのですからまともな実態としてのデータはでてきません。 考えれば容易に推定できる耐性ウイルスの早期拡大に対して、データは提出されず、エビデンスがないというそれだけの理由で、使用量についての制限もなく(一人の患者さんへの投与量は制限がありますが、耐性ウイルス対策として総使用量に関する制限)薬価収載となり、あとは、単なる風邪だった人も含めて大量投与がおこなわれたのでしょう。 

 

エビデンスなどというものは判断材料の一つにすぎません。 考えればわかることぐらいは考えて頂きたいのです。

 

がん細胞は本人の細胞ですからがん細胞を攻撃して正常細胞を攻撃しない薬は開発できない、だから薬でがんは治らないというのは非常にクリアですが、インフルエンザウイルスは野生の鴨のウイルスなんだから人間の細胞を傷つけないでウイルスだけやっつける薬がつくれるのかというと、それは無理です。ウイルスの増殖には人間の細胞の機能が使われているからです。 ウイルス自前のRNAポリメラーゼという酵素がウイルスの遺伝子を構成するRNA鎖をつくりますが、感染したヒト細胞のシステムを活用しないと非常に効率が悪いのです。 感染してから飛び出していくまで関与する物質はすべてヒト細胞が活動するのに重要なものばかりでそのどこかにスパイクを入れる薬でないと効果は期待できませんが副作用も激しくなり、副作用をマイルドに抑えると効果も薄いものになります。そのためヒトとは異なる生物である細菌を攻撃する抗生物質や抗菌剤に比べて抗ウイルス剤は抗がん剤に近い特性をもち、エイズのような死亡率が高いウイルス感染に使用する抗ウイルス薬は非常に強い副作用を、寝ていれば治る可能性が極めて高いインフルエンザ薬の場合は効果も副作用も控えめに設計されています。 ともかく、どうやっても耐性無縁の抗ウイルス薬は開発できないのです。

 

「クスリ使えば耐性」 この当たり前の原理を踏まえ、パンデミックのリスクと対処法を考え、 寝ていれば治る普通のインフルエンザをどうするのか   少し考えれば結論は明確ですが保険診療医師の先生方はどう考えられるのでしょうか。 

>>全投稿記事一覧を見る