藤井真則のブログ

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TOP > 風邪に抗菌剤を処方するな発言

2017年05月04日

  

くすり

2017.5.4.

 

 

 

風邪に抗菌剤を処方するな、という

厚労大臣のご発言が話題となっています。

 

 

そもそも日本は、国策として

抗生物質の大量処方を推奨してきた経緯があり

世界でも例をみない、

なんでもかんでも抗生物質を

使いまくる異常な国です。

 

なお、抗生物質と抗菌剤の区別もしないと

いけないですが、それは次回以降に回しましょう。

 

 

風邪に風邪薬を処方すること自体が

世界では、不思議がられています。

 

特に、解熱剤。

 

免疫抑制作用がある薬を

なんで、感染症に処方するのか、と。

 

 

まだ、抗生剤や抗菌剤の方が

如何にも感染症には合っているように

思えますが、免疫抑制剤のんじゃったら

感染は悪化するはずです。

 

 

そもそも、「風邪」とはなんぞや、という

根本的な問題があり、

実は、よくわからないのです。

 

感染症といっても、コレラ菌のように

普段は、土壌細菌として「土着」しているものが

人間の体に侵入してくるものもあります。

こういう場合、土壌でコレラ菌が常在化していない

地域では、流行はすぐに収まります。

 

風邪というのは、インフルエンザウイルスが

外からやってきて発症しているのかもしれませんし

体内の常在菌が、少し、暴れているのかもしれません。

ひとつの病原体が特定できる場合があり

それ以外の、「風邪のような」症状を発しているものを

風邪と呼んでいるのであって、実際に、体内で

「何」が暴れているのかは定かではありません。

 

暴れているのが菌ならば、抗生剤や抗菌剤で

やっつけよう、というのは、まだわかるのですが

もし、ウイルスが異常増殖しているなら

抗生剤や抗菌剤は、「当る」はずがありません。

 

抗生剤や抗菌剤の標的は、細菌特有の物質であって

ウイルスには同じ標的物質は存在しません。

 

 

ヨーロッパでは、まず、何が感染しているのかを

特定しようと、体液の一部を培養し、増殖してきたものに

適合する抗生剤を処方するという手法が定着してきました。

その際、極力、他の細菌を巻き添えにしない

ナロースペクトラムというのですが、特定のタイプの細菌以外は

殺さないものを選ぶのです。

 

日本は、目をつぶって、検査もせず

いきなりワイドスペクトラム、多くのタイプの細菌を

傷害する抗生剤や抗菌剤を投与するというスタイルで

やってきました。

 

相手がウイルス主役の場合、的がはずれるのと

他の細菌が大量に死んでしまい、体内の細菌の

バランスが崩れる、そこへ、新天地に躍進する

新たな細菌の異常増殖を招くリスクがあるのかもしれない

さらには、薬剤耐性細菌を育てることになる。

 

あるいは、肝機能障害など、副作用もあり得るわけで

目をつぶっていきなり抗生剤、抗菌剤というのは

医学的な見地を無視して、政策的に異常な状況を

誘導してきた結果です。

 

 

日本は戦後、抗生剤、血液製剤、ワクチンで

医療産業を育成するよう、占領軍のご指導がありました。

医師の数も制限し、高度な診断よりも

いきなり抗生剤投与で、薬価差益によって

収益を確保させる、というのが

当初の政策だったのです。

 

80年台に入っても、まだ医家向け医薬品の50%以上が

抗生剤という極端に異常な国だったのです。

 

その後の薬価大改訂で、抗生剤の薬価が劇的に下げられ

医薬品の売り上げ構成としては、抗生剤が目立たなくなって

いきましたが、「使い方」の無茶ぶりは相変わらずです。

 

もっとも薬剤耐性の問題は、家畜用に大量使用されてきた

抗生剤によるものも無視できません。

 

 

 

医薬品ビジネスの最初の海外出張は

ヨーロッパの医薬品産業揺籃の地

チロル地方でした。

そこを流れるイン川のほとりに

世界の主要抗生剤メーカーに

原料を独占的に供給する巨大工場があり

まず、そこを訪問しました。

とんでもない巨大な醗酵タンクが

何本も並んでいます。

抗生剤ともなると

取引数量は「万トン」単位となります。

 

一方、日本のメーカーに

7ACAと呼ばれる物質を製造する

プラントを販売したのですが

ヨーロッパでは、なんでそんなものを?

という反応でした。

 

日本とヨーロッパ、使う抗生剤が

まったく違うのです。

 

ヨーロッパでは、6APAと呼ばれる

抗生剤の基本骨格か、これに側鎖がついた

ペニシリンGなどが、取引され、これを

購入した抗生剤メーカーが、側鎖をつけて

自社製品に改造します。 日本にも同じものが

入ってきますが、量はしれています。

ヨーロッパでは、第一世代、

いわゆるペニシリン系と呼ばれる

スぺトラムが狭いタイプの抗生剤が

大量に使われてきたのです。

 

一方、日本では、第三世代、セファロスポリンに

代表される、スペクトラムが広いタイプの抗生剤が

大量、といっても、物量としては少ないのですが

高額なので、巨額に使われてきました。

 

主に使われる抗生剤の性質が違うのです。

 

ペニシリンVなどの歩留りは、50%以上

つまり、醗酵タンクの液体の中の物質の

半分以上が、ペニシリン系の物質となり

醗酵タンクをハンマーで叩いたりすると、

即座に結晶化するので、タンクとタンク周辺を

歩いて点検をするラダーは、かなり離してあります。

芸術レベルの醗酵技術と、ヨーロッパの食品産業に

対する保護政策が相まって、醗酵原料が安く入手でき

ずっとヨーロッパでの生産が続いていました。

 

第二世代の抗生物質、いわゆるテトラサイクリン系は

市場規模も数百トンレベルになりますが、

こういうのは、醗酵コストが安い中国へ

製造移転されていきました。

 

こういったものを世界という視点から

見ると、日本は、極端な異常が目につきます。

 

 

抗菌剤というのは、また違うものなのですが

風邪に対して、どかどか、抗生剤や抗菌剤を

投与というのは、かなり無理すじな話なので

是正されていくのは当然の成り行きでしょう。

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