藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHP(リンクをお願いします)をご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2008年12月09日

  

くすり

2008.12.8.

CA19-9は、腫瘍マーカーの第二世代として、一気に品揃えを
進めるきっかけとなりました。 数品目しかなかった腫瘍マーカーが
数十品目に増加する導線になったのです。

一方、CA19-9は、更なる波紋を拡げました。
「ミサイル療法フィーバー」です。
抗体に爆弾をつけ、抗体が腫瘍組織に爆弾を運び、
腫瘍を吹っ飛ばす精密誘導弾、つまり、がんを攻撃する
ミサイルを開発しようという機運が一気に盛り上がったのです。

結果的にミサイル療法フィーバーは、
「大山鳴動してネズミ一匹のがんを治す」
ところで終わるのですが、後に、形を変え、技術の
筋目、狙い目を変え、抗体医薬品として
世に現われます。 弾頭を持つミサイルではなく、
NK細胞を誘導する、レーザーペイント(レーザーで
ここに敵がいますよ、と、マークするもの)
みたいなものですが。

CA19-9に使用される抗体が認識するエピトープ、つまり
抗原のコア部分は、二糖、たった二つの糖分子が
結合したものと、当初は、考えられていました。
CA19-9のエピトープや類似、あるいは周辺の糖鎖を
合成したり、天然糖鎖から、該当部分を切り出して、
診断キットの精度管理に使ったり、他の診断キットや、
ミサイル療法用抗体の作成に用いることができるかも
しれません。

ところが、エピトープの構造を見た時、これはシンドイ、
と直観しました。 この構造は、体内のどこにでもある、、、

実際、CA19-9は、がん細胞特有の糖鎖構造を認識している
のではありません。 CA19-9が認識している糖鎖抗原は
正常細胞に広く存在しているものです。
これはCA19-9に限りませんが、「腫瘍特異抗原というものが
あって、それを認識するのが腫瘍マーカー」、ではないのです。

どこにでもある糖鎖抗原が、正常細胞からは、少しずつ遊離し、
血中に出てくる。 そこへ、ある種の腫瘍組織からは、
同じ糖鎖抗原が大量に血中へ出てくる。
そこで、血中の抗原量が顕著に高いと、腫瘍組織の活動なり
存在なりを疑う、ということになるのです。
CA19-9の場合、膵臓がんの全てではないのですが、かなりの
高率で、標的糖鎖抗原が血中に高濃度で出てくるので
診断薬として認可されたのです。 

ところが。

米国において特に顕著なのですが、
この分野がHOTだ! おもしろい、となると、
NIH(国立衛生研究所)の巨額予算の
集中豪雨が降り、研究者が群がり、
ベンチャー企業を起こし、すぐに上場して
創業者は株を売り抜け、上場1年以内に
ベンチャー企業の8割は倒産、
という茶番劇が演じられます。

CA19-9は、素晴らしい診断キットですが、
ミサイル療法には向いていません。
それは、試すまでもなく、最初から分かることです。

元々、無理と分かっていることにも、
予算の集中豪雨は降ってきます。
今日、ちょっとした軽いスコールが降っている
樹状細胞や、がんワクチンと同じようなものでしょう。
理屈からして、実用化には、無理があると分かっていても、
一旦、ついた弾みは誰にも止められません。
それに、CA19-9以外にも、山ほど、
候補があります。 CA19-9の見事な
登場が、実態以上の幻想を抱かせて
しまったのです。

コンタクトをとったバイオベンチャー企業の数を
数えていたのですが、その内、
ミサイル療法を標榜するベンチャー
企業が何社だったかは覚えていません。
余りにも下らないので、ビジネスプランを
まともに読む気にならず、Executive Summary
という2,3ページの簡単なまとめを見ただけで、
またかぁ、、と溜息をつき、資料はゴミ箱行きでした。
実際に相手先を訪問するとか、日本で会う、とか、
ましてや、何か契約する、というところまでいった
相手はなかったですね。

業界紙で見かけたミサイル療法屋さんは、
三桁、居たのではないでしょうか。

セントコアという米国ベンチャーはおもしろい、
と思ったのですが、富士レビオが先に手をつけ、
結果的に、診断薬部門を買収、完全子会社化しました。
この会社、国内大手医薬品メーカーより、海外へのアンテナ、
フットワーク、交渉力や実行力、いずれも上を行っておりました。

セルテックという英国ベンチャーも、存在感を示しておりましたが、
ここは、住友商事が投資し、やはり金を出した者は強く、
総代理店権を取得しました。 セルテックは、ミサイル療法屋ではなく、
抗体を供給する、物作り屋さんで、インターフェロンなどの
先行して実用化されたバイオ医薬品製造工程で使用される
精製用抗体でビジネス基盤を築きます。
今や、今日の抗体医薬品の主成分である抗体そのもの製造に、
最有力供給元として、気を吐いております。
(ちなみに、医薬品メーカーの本質は、物を作る会社ではありません。
 物は、物作りの専門メーカーから買ってくるのです。)

要するに、腫瘍組織に対するモノクローナル抗体を拾ったからと
いって、それが、いくつかのセルライン化された「元」正常細胞には
たまたま反応しなかったから、といって、生身の人間の体に投与なんか
すれば、体中、いたるところに、くっつきまくるのです。
しかも、体内のどこにくっついたか調べるために、放射性物質を
つけて投与するんです。 安全、というのですが。

かくして、雨後の竹の子の如く表れ、あっという間に雲散霧消した
ミサイル療法ベンチャー企業群。 

ミサイル療法の特徴は、

  ヒト型もしくは、ヒトモノクローナル抗体の技術が普及する前であり、
  基本的にマウスの抗体を使用した(人体が拒絶反応を示す)

  細胞表面の糖鎖抗原を対象としたものが大半
  (腫瘍組織特有の糖鎖構造はみつからなかった)

  抗体に毒物、強い化学療法剤、放射性物質などをつけ、
  腫瘍組織の破壊を狙った 
  (がん細胞を殺すのに発ガン物質を使う矛盾、副作用が凄まじい)

今日の抗体医薬品は、

  ヒト型もしくは、ヒトモノクローナル抗体が原則となってきた
  (初期のものは、マウスの蛋白質構造部分が含まれます)

  細胞膜貫通型糖蛋白質を標的とするものが大半
  (腫瘍組織特有の蛋白質はみつからないが、がん細胞が
   正常細胞よりも過剰に発現する物質を標的とする)< br />
  抗体は、がん細胞への増殖刺激を妨害するだけで、
  がん細胞を殺さない。
  (がん細胞を殺すのはNK細胞に依存し、NK細胞を刺激する)

一見、同じ抗体を使った、腫瘍組織への攻撃ですが、
遥かに、理屈が通ってきました。
まだまだ、入り口に立った段階ですが。
  

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