藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHP(リンクをお願いします)をご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > 今年のASCO全米がん臨床学会総会

2017年06月16日

  

がん, 免疫

2017.6.16.

 

 

 

世界最大の「がん学会」である

ASCO(全米がん臨床学会)が閉会し

開会中の速報ベースのものにかわって

ボツボツと、レビュー的な報告などが

日本でも増えてきました。

 

 

2013年のASCOで大きな注目を

集めた免疫チェックポイント阻害薬ですが

PD1/PD-L1 系統の先頭バッターの

単剤評価はとっくに終わり、

多剤併用の結果報告や議論が活発でした。

 

 

結論から言うと、盛り上げつづけようという努力は

盛んながら、峠はこえている、というところでしょう。

 

ASCO閉会後、メーカーの株価(NY)も下がっています。

 

 

日本だと、オプジーボのメディア露出が

圧倒的ですが、米国での主役は、キイトルーダーです。

両者の臨床成績の数字だけみると、大きな違いが

あるように見えますが、基本的に、よく似た薬です。

臨床試験の設計が異なるため、結果の数字に

差がでることがある、ということです。

 

どちらも、PD-L1を発現するがんの方が

発現しないがんよりも、薬が効きやすいことに

かわりはありません。

 

ただ、オプジーボが、PD-L1を発現していなくても

投与する原則としてきたのに対し、キイトルーダーは

原則、PD-L1を発現する場合、投与としてきました。

今回のASCOでは、PD-L1を発現していなくても

全く効かないわけではない、

ということが強調されていました。

 

 

患者の選別の仕方が違うため、

つまり、オプジーボの方が、

薬が効かないと考えられる

ケースでも投与することが多くなるので、

成績は悪く見えます。

逆に、投与しない方が好ましい患者が多数

混じっていても投与するので

薬の売上は伸びます。

 

臨床現場では、あるマーカーを出しているのかどうか、

しかもそれが、血液検査ではわからないものが

投薬の可否条件となると、

途端に、「使いにくい」薬になります。

検査抜きの方が、多くの患者さんに

処方されていくわけですが、それだけ、効果がなく

副作用を伴うケースが増えていくことになります。

副作用が強い免疫チェックポイント阻害薬の場合は

やはり、可能な限りのマーカーを調べてから

投与するのが筋でしょう。

 

 

 

さて、「動くお金の違い」や、法制度の違いから

臨床開発において、

日本が先行することは滅多にありません。

米国もトップバッターではないのですが

米国で本格臨床試験の大規模な展開、これが

新薬開発のひのき舞台になります。

 

実は場末のバーなどでデビューはすませ

公演実績を重ねているのだけど

「新人」として、ど派手にカーネギーデビュー!

新薬も、ビートルズも登場の仕方に

共通のものがあります。

 

日本の場合、米国の治験の結果をよくみて

だったら、こうすれば「当る」と目ぼしをつけて

承認申請用一発治験を実施します。

米国の場合は、「はずれ」も想定しながら

網羅的に、可能な限りの治験をやろうとします。

 

その発表をまとめてやるASCOは

医薬品産業にとって、一大イベントとなります。

 

免疫チェックポイント阻害薬については

後続の新薬が続々と開発中ですので

まだまだ新人デビューも続きますが

どうしても、最初に「勝った」薬が

広く使われることになり

後からきた薬は、治験の際に

「先輩」との比較を求められたり

併用での治験を要求されたりと

制約が増えてきます。

 

先頭バッターの問題点が明らかになるにつれ

後続新薬の開発には、次々に追加の宿題がだされ

開発費は膨らんでいきます。

 

 

それでも、治験の数をうてば、当りもでてきます。

特に、併用の治験となると、組み合わせの種類は

膨大になり、しかも、プランAとプランBの比較により

どちらが延命するか、というデータをとれば

プランAは、Bより、1ヶ月延命というのは

Bは、Aより、1ヶ月余命が短縮する、ということと

同じ意味なのですが、ともかく、数をこなすことで

この部位の、このステージの、この治療を受けたあとの

患者に、これとこれを併用すれば、1ヶ月延命する

エビデンスがある、となっていくわけです。

 

一方、併用により、予期せぬ副作用の頻発という

事態もおこります。 微妙な効果を示すために

深刻な副作用が発生すると、直ちに、治験中止

ということになります。

 

 

結局のところ、患者さんが、どれだけ元気になるのか、

ということは、棚にあげて、この世にいる時を延ばす、

もちろん、それ自体は、大事なことなのですが

データ上の、微妙な差異があるかないかを

大騒ぎをして検証を進めていくのです。

 

莫大な資金と投じて

エビデンスがあるとかないとか

やっていくわけですが

何をやっているのか、中身をみれば

こういうのが実態です。

 

 

今年のASCOも、微妙なデータ上の差異に終始し

どうすれば、がんという病気を治せるのか

どうすれば、がんという病気にかかっても

死なないですむのか、という本気の議論は

聞こえてきません。 どこかでやってたのかも

しれませんが、大勢は、膨大な治験の報告であり

で、結局、それで患者さんは助かるの?

という問いには、何の答えにもならない話

という印象です。

 

 

まだまだ、人はあてにしないで

頑張ってやっていかないと、と

意を新たにするASCOでした。

 

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