藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHP(リンクをお願いします)をご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > 武田薬品さん提携次世代固形がんCAR-T

2017年09月10日

  

がん, 免疫

2017.9.10.

 

 

 

武田薬品さんが、CAR-T療法の

技術を有するベンチャー企業さんとの

提携を発表されています。

 

次世代CAR-T療法と銘打ち、

固形がんに対して有効なものと

発表されています。

 

 

では、臨床上の実用レベルの固形がんに

有効なCAR-T療法開発について

目途が立ったのでしょうか。

 

 

結論から申し上げますと

いくつもあるハードルの一つを

これで超えられるかもしれない

という要素技術を開発した、

ということです。

 

CAR-T療法というのは、

キラーT細胞に遺伝子改変を行い

特定の標的物質を発現する標的細胞を

攻撃するよう「改造」した

免疫細胞療法の一種です。

 

ノバルティスさんの、CAR-T019が

FDAの承認を取得し、治療費5千万円以上

ということも話題になっていますが

実際には、附帯費用がもっと発生します。

 

CAR-T療法というのは、固形がんに対しては

実験レベルでも、威力を示すことが難しく

これまで、がん細胞を傷害することに

成功してきたのは、特定のリンパ球を標的と

するものに限られていました。

承認取得にいたったものは、

B細胞に特有のCD19を標的とする

CAR-T療法であり、B細胞型の悪性リンパ腫の

一部を対象としますが、正常なB細胞も

攻撃します。そのため、血液中の抗体が

激減し、野菜を食べても感染症、という

レベルに至ることもあるため、

免疫グロブリン製剤を大量投与するなど

補助療法が必要になります。

 

 

要するに、がん細胞特有の「単一物質」としての

標的物質は存在しないため、B細胞に広く分布する

物質を標的とし、がん細胞も正常細胞も

軒並み攻撃する、というやり方しかできないわけです。

 

がん細胞そのものを認識し、

正常細胞は傷害しないNK細胞ではなく、

単純な標的物質に反応するT細胞を用いる限り

敵と味方を区別できないという

この限界を突破することはできません。

 

 

では、固形がんを標的とする場合、

固形がんにも、正常な組織を構成する正常細胞にも

共通の標的物質を対象にCAR-Tをつくればいいのか

というと、それ以前の問題で、ひっかかってきたのです。

 

シンプルに申し上げると、攻撃力不足により

マウスに移植したヒトがん細胞が形成した腫瘍で

あっても、CAR-Tでは、満足な傷害作用が

観られなかったのです。

 

 

今回、武田薬品さんが、提携を発表された

ベンチャー企業さんの要素技術というのは、

CAR-Tの遺伝子改変の際に、他のリンパ球を

呼び寄せる物質や、免疫刺激物質などの産生遺伝子も

一緒に組み込む、というものです。

 

結果として、腫瘍の消失が見られる、ということなのですが

あくまで、マウスに移植されたヒトの膵癌細胞などに

リンパ球などによく発現しているマーカー物質を

遺伝子改変によって導入してあります。

 

現実のがん患者さんの体内に存在する本物のがん細胞が

つくる腫瘍組織とは、かなり異なるものです。

 

 

よく言われる、「ネズミのがんを治す話」の領域を

出ていないものですが、ともかくも、固形がんには

手も足もでなかったCAR-Tの増強策の一つとして

武器が増えた、ということにはなります。

 

 

では、これで直ちに実用化へ走れるのか、というと

まだまだハードルだらけです。

 

 

標的物質をどうするのか。

 

今回のように日ごろから、T細胞が馴染んでいる

リンパ球系のマーカーに比べると、固形がんに

多く発現する物質、つまり正常な上皮組織にも

発現している物質は、そもそも、CAR-Tからは

見えにくい、という問題もあります。

 

 

固形がんをCAR-Tで狙う際の標的物質については

別途、このブログで紹介していく予定です。

 

 

今回は、CAR-Tを奏効させるための必須要件を

整理しておきます。

 

 

標的物質の選定という最重要要件については

このブログのこれまでの記事や、今後、新たに

書くものをご参照ください。

 

それ以外に、活性を維持ないし高める遺伝子改変が

必須です。

というのは、キラーT細胞は、どちらかといえば

免疫抑制系の細胞です。

がん患者さん体内の強い免疫抑制下に

キラーT細胞を投与しても、

直ちに活性が低下し、機能しなくなります。

これは、米国NIHが実施した大規模臨床試験でも

確認されており、

また、私どもが、CTL療法(キラーT療法)を

提供する際には、

ANK療法によって、強い免疫刺激を加えながら

同時に実施することを条件としています。

CAR-T細胞を、がん患者体内に投与すると

いきなりダウンしますので、

強い免疫刺激シグナルが発生する、

もしくは、抑制シグナルをブロックするなど

結果的に、高活性を維持できる様な遺伝子改変を

行わなければ、何の役にもたたなくなります。

 

そして、今回の提携対象となった技術が示すように

特に固形がんを対象とする場合、

免疫細胞が集積するような

サイトカインあるいは、ケモカイン等と呼ばれる

免疫刺激物質や、仲間の免疫細胞を「呼び寄せる因子」を

大量放出する遺伝子改変も重要、ということです。

 

 

他にも、CAR-T療法は、体内で、いつまでも、

「暴走」を続ける傾向もあるため、その対策を

講じる必要があります。

つまり、遺伝子改変により

活性化のスイッチが入りっぱなしになるため、

戦闘終結の段階になってもなお、

攻撃行動を続ける、

そして、がん細胞が減ってきても

攻撃を継続すると、正常細胞ばかりがダメージを

受けるようになります。

揚句に、他の免疫細胞を呼び続け、活性化信号を

送り続けると、正常組織に対する自己免疫的な

攻撃が継続することになり、深刻な副作用を

招く危険があります。

そのため、アポトーシス誘導など、CAR-Tが

消滅するための遺伝子改変による安全装置も

考案されています。

>>全投稿記事一覧を見る