藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHP(リンクをお願いします)をご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > 文藝春秋誌の記事

2012年09月15日

  

がん

2012.9.15.

文藝春秋誌に「抗がん剤は効かない」で
有名な近藤先生が、今度は、「先進医療は金の無駄使い」という
寄稿をされ、「先進医療で行われる粒子線療法と免疫療法」を
こき下ろしておられます。

先進医療適用といえば、粒子線療法ですが、
免疫細胞療法として先進医療で実施されているものは
実際には、ほとんどありません。
久留米大学のペプチドワクチンというものもありますが
これは免疫系の治療ではありますが、免疫細胞療法では
ありません。 他に適用をとったものはありますが
実施例は数名単位とか、わずかなものにすぎません。

先進医療制度というのは、実験データ取得を目的とするもので
「特定の医療機関」が申請し、「承認された医療機関だけが」
「非常に狭い条件を満たす限定された患者さん」だけに
「治療実施要領なども細かく決めて」行うものです。

ANK療法についても、かつて大学病院から申請するべく
検討されたことがありましたが、結局、実際にはほとんど
存在しないような条件の患者さんに限って実験を行う
というものにすぎませんでした。

広島大学さんでも、NK細胞療法の先進医療適用を
申請されましたが、申請前の治療実績は、2年間で
14名でした。 先進医療というのは、そういう制度です。

ほとんどの患者さんにとって、適用にならないものです。

ただ、重粒子線療法については、歴史的な経緯があって
最近、新たに申請されるものより、適用範囲が広くなっています。

さて、同誌記事の内容についてとやかく言うつもりはありませんが
粒子線療法については、特に有名な重粒子線療法の場合、確かに一般に信じられているほど 有効なものではなく、しかも副作用が激しいことは事実です。
そもそも所詮は、局所療法ですから、患者生死に直結する
「飛び散るがん」、には対処できません。

生死に直結しない、限局性のがん、発生部位にとどまるがんを
消すことができるだけです。 近藤先生は、「がんもどき」という
表現を用いられ、放置しても生死にかかわらない、とされています。
では、限局性のがんを、ずっと放置して、本当にずっと限局性のまま
なのか、というと、これは、何ともいえません。
手術しない人が、データを取るためだけに、
ずっと病院に通い続けることはありません。
手術した人しか、データにならないわけです。
限局性のがんを手術で取った人は、まず助かるわけです。
限局性のがんを放置した人がどうなるかはわかりません。

粒子線、特に重粒子線は、照射部位の細胞をがん細胞であろうが
正常細胞であろうが、一切、区別せず根こそぎ殺してしまいます。
エックス線であれば、(もちろん、線量を抑えれば、ということですが)
染色体のところどこをぶつ切りにするだけなので、染色体が畳み込まれて
いると、たちどころにつなぎ直されてしまいます。
結局、染色体を広げている状態でブツブツ切られると、
破片が飛び散ってしまい、修理できなくなる、
要するに、細胞分裂中で、染色体が展開している状態の細胞が
致命的なダメージを受け、そうでない細胞は、結構、耐えます。
そのため、組織中の細胞が根絶やしになることはありません。
当然、がん細胞も生き残るものがいます。

重粒子は、一発で吹き飛ばすので、ごっそり細胞が死んでしまい
大穴があきます。 体の場所によっては、穴が開くこと自体が
致命傷となるので、撃てる場所に制限があります。しかも、穴を
何が埋めるかが問題です。もし、がん細胞が生き残っていれば
あっという間に、がん細胞が埋め尽くします。菌類が増殖したら
おおごとです。 そして、転移があった場合、転移巣は急激に
増殖します。 大穴を埋めるべく、尋常でない量の細胞増殖因子
のシャワーが放出され、それを受け取ったがん細胞が大増殖するからです。

重粒子線療法は、先進医療の適用をとったがために、使用法が限定されています。
本来は、もっと小さな腫瘍の塊を一気に消し去るために使うべきものでしょう。
変な話ですが、腫瘍サイズが小さすぎると、先進医療制度の条件に従い
腫瘍が大きく育つまで、待たなければ、重粒子線療法を受けることができません。
もっとも、大きくなりすぎても照射できませんし、また施設によって
リンパ節転移がみつかると、最初から治療しません。
転移を伴う場合、重粒子線療法を行っても延命しないと
考えられているからです。

さて、近藤先生の寄稿には、免疫療法は失敗する云々と、持論を展開されて
おられるのですが、一言でいうと、「獲得免疫のお話」に終始されています。
確かに、獲得免疫を動員しての、がん退治は無理があります。
がん治療として行う免疫療法は、自然免疫を動かさなければ
あまり意味はありません。
「獲得免疫系の免疫療法は失敗する」という趣旨ならば、
まあ、概ね、そうですねえ、という内容になっています。

ところが、免疫には自然免疫というものがあり、
生まれながらに、がん細胞を認識できるNK細胞を
主力とする腫瘍免疫に関しては、今回のご寄稿で指摘
しておられる「免疫システムとはこういうもの」、という
記述は該当しません。

免疫の基本は自然免疫です。
生まれながらにして、排除すべき相手の正体を
知っているのです。

未知のウイルスには免疫がない、それが事実なら
人類はとっくに滅亡しているはずです。
私たちが暮らす空間であれ、体の中であれ
ウイルスはいくらでもいます。
細胞の中を調べると、ウジャウジャとウイルス遺伝子が
みつかります。 酵母を除く、すべての生命体において
調べてみればウイルスがみつかります。
これがいちいち感染症を起こすのであれば
とても生きていくことはできません。
実際には、如何なるウイルスに対しても
直ちに対応する免疫システムが備わっています。
感染症とは、異常に感染力が強い病原体が大量に
侵入する場合をのぞき、通常、病原体が原因なのではなく
病原体の異常増殖や感染を招く免疫系の異常が原因です

相手が、がん細胞の場合も仕組みは違いますが
基本的には、「生まれながらに」がん細胞と
正常細胞を見分けるシステムがあり、
がん細胞は、免疫システムが正常に機能している間は
見つけ次第、その場で、直ちに排除されます。
一方、免疫監視機構というものが弱ってくると
がんは異常増殖を始めることがあり、免疫は
さらに抑制をかけられ、ほとんどの「安全な」
免疫系治療が、強い免疫抑制の壁に跳ね返されます。
丸山ワクチンのようなきわめて安全なものは
当然、免疫抑制の壁を破ることはできません。
ピシバニールやレンチナンも通常の使い方では
免疫刺激が弱すぎます。

腫瘍免疫の基本を無視して
感染症防御の司令塔であって、がん細胞を認識する能力が低い
樹状細胞をがん治療に用いる、とか、がん細胞を認識・攻撃する能力が低い
T細胞を、がん治療に動員する、はては、感染症を予防する目的で
使用されるワクチンを、がんの「治療」に使う、という
何を考えているのか、よくわらかないものが、有名教授や
有名TV番組で紹介され、情報が混乱しているのは事実です。
その意味では、今回の文芸春秋誌の主張は、まあ、ある程度までは
分からないではないのですが、ただ、免疫細胞療法をバッサリ批判するなら
自然免疫について、まるで言及がない、というのも、新たな情報の混乱を
助長しているだけ、ということになります。

私の本音は、もういい加減にしろ! です。
いったい、だれが、患者さんの命のことを考えているのか!?

腫瘍免疫からはずれた免疫系を無理やり、がん治療に使うのは
馬鹿げています。 では、標準治療は、だめなのでしょうか。
確かに、進行性のがんについては、標準治療で助かる可能性は
非常に低いのが現実です。じゃあ、標準治療は効果がないのでしょうか。
それは違います。標準治療だけを延々と続けると、がんは反撃してくるは、
体はボロボロになるは、結局、助からない、それはそうなのですが
ある程度までならば、がん細胞の数を減らすことは、割と得意です。
最後の詰めをやれる治療が標準治療の中にはないから、「最初から
何も治療しない方がいいのではないのか」という疑問がでてくるわけです。

ところが、最後に飛び散るがん細胞にとどめをさせる活性化された
NK細胞の大集団を治療に使える、そういう前提に立てば、標準治療も
あるところまでは、大いに役に立つのです。

結局、あくまで患者さんごとに状況が異なるのですが、
手術、放射線、抗がん剤は、ある程度までの効果を発揮することはある
重粒子線は、まあ、使えるケースは非常に限られる
獲得免疫系の免疫治療や、活性が低くいか数が少なくて
熱もでないNK細胞系治療、がんワクチンの類、こういったものは
意味はない
ホルモン療法剤、分子標的薬、特にNK細胞をサポートするADCC活性を
もつ分子標的薬、これらは、ANKと同時併用が推奨される、

おおざっぱにまとめると、こういう概略です。

既存の考え方や、既成の基準で測定したデータをもって、何が効く、
とか効かない、とか、そんな議論に関心はありません。

では、どうやって、患者さんの命を救うのか?

この問いに対し、何の答えにもならない。

まず、患者さんの命を助ける、と腹をくくり、
その上で、何が使えるのか考えるのが
医療に従事するものの仕事と考えます

>>全投稿記事一覧を見る