藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > フォルクスワーゲン事件 (5)

2015年11月24日

  

えとせとら

2015.11.23.
 
 
ドイツ当局が
フォルクスワーゲン以外の
各メーカ―の50車種について
NOXの排気量を調べたところ、
問題があることが分かった、
ただし、まだ調査中なので
具体名は言えない、と発表しました。
 
NOX問題を徹底検証すると
ハルマゲドンとなります。
 
フォルクスワーゲン以外も
みんな問題じゃないか、じゃあ
しょうがないから、これからも
フォルクスワーゲン買ってください
という作戦か、
そっちがやるなら
こっちもやるぞ、と
対抗手段を見せ
フォルクスワーゲンへの
追及の手を緩めさせる作戦、、、
 
 
どういうことになるのか
これから、泥仕合の応酬に
なるのかもしれません。
 
 
自動車エンジンは
不完全燃焼を前提に
設計にされており
燃え残り燃料が
オイル微粒子として
排気ガスに含まれることは
不可避であり
発生を抑えようとして
空気の混合比を高めにすると
今度は、空気中の窒素が
NOXとなる反応を促進してしまう
というジレンマの構造をもつ
 
そこで、NOXと、一酸化炭素や
燃え残り燃料を互いに反応させ合って
相殺させるフィルターが用いられる
(いわゆる三混触媒フィルター)
 
更に、アルカリ処理によって
未反応のNOXは、吸着されるが
今度は空気中の未反応の窒素ガスまでが
アルカリ処理を受けてしまい
元々あったNOX中の窒素総量を
上回るアンモニア(窒素+水素)が発生
してしまい、大気中で酸化され
結局、NOXに戻り
地下水に浸み込み
硝酸性窒素として
深刻な環境破壊に
つながっていく
 
 
ここまでは前回までに
書かせていただきましたが
オイル微粒子については
これを除去する
DPFフィルターが
実用化されています。
 
三混触媒用のフィルターと
DPFフィルターは、一見、
似ているように見えますが、
技術的な要求水準は次元が違うほどの
差があり、DPFフィルターの方が、
遥かに難しいのです。
 
トラップされたオイル微粒子は、
たまに、ボッ! 
と燃えあがることがあります。
その時、一瞬にして、1500度Cに達し
速やかに冷却されます。
 
 
これだけの急激な温度変化
しかも、フィルターの一部だけが
1500度Cに達し、周辺は
排気ガスの温度のまま、という
強烈な熱応力を受けて
それでも無事な素材があるのか
という問題です。
 
 
結論から言うと
試験に合格するDPFフィルターを
つくることはできます。
なので、各社、「合法的」に対応しています。
ところが、使っている内に壊れてしまいます。
それは技術的には問題なのですが
「合法的」なのです。
もっとも、業界内では大問題になり
スキャンダル化しましたが、
一般にはそれほど知られていません。
 
こういう状況の中で、
実際に使用に耐える素材で
つくられた「ホンモノ」DPFフィルターを
採用したのが、フォルクスワーゲンをはじめ
ドイツ系自動車メーカー3社なのです。
 
よりによって、その「良い子の」
フォルクスワーゲンが
NOX事件で大騒ぎになっているわけです。
 
 
さて、ガラスは1500度Cなら溶けてしまいますが
金属のほとんどは、全くもちません。
 
特殊な合金で、1500度Cに耐えるものはあり、
実際、ボッシュ社が、DPFフィルター素材として
開発していた特殊合金があるのすが
結局、同社は開発を断念しました。
 
 
代表的な工業用セラミックスである
アルミナ(酸化アルミニウム)の焼成物は
1500度Cに耐えています。
 
京セラという会社は、京都のセラミックスの会社
という意味で、セルラーフォンの会社という意味では
ありませんが、アルミナの用途開発で大きくなった会社です。
 
サファイアも主成分はアルミナです。
アルミナは、混ぜ物によって、全く違う性状や特性を
もつようになります。
高純度アルミナを焼成すると
少し表面がザラッとした緻密な白煉瓦のような
ものになります。 
表面は、ツルツルにすることもできますが。
 
ところが、アルミナは、温度変化には弱く
1時間に200度C以上の温度変化で
割れてしまいます。
 
焼き物を作ろう、と思うと
まず粘土をこねますが
粘土にもアルミナがたくさん
含まれています。
 
炉の内壁に使う炉材も、大抵、アルミナです。
 
そのため、数時間かけてゆっくり温度を上げ
焼成後も、数時間(5時間よりも長いですね)以上
時間をかけて、ゆっくり冷やさないと
割れてしまいます。
 
1000度C位で焼いても
実際には、5時間で冷やすと
かなり割れてしまいます。
 
とても、1500度C ボッ! 
その後、急冷には耐えられません。
 
鉄の高炉は、火を入れて、鉄をつくりつづけ
一度、火を止めると耐火レンガが割れてしまうので
新たに張り替えます。なので、操業を始めると
そう滅多に火を止めることなく、連続運転されます。
 
 
DPFフィルターというのは、通常、温度上昇にも
冷却にも、各々、数時間以上かけなければもたないところを
一瞬にして、急速加温、急速冷却されるのです。
 
アルミナ以外の工業セラミックスとして
コーデュライト、ムライト などもあります。
成分はほとんどアルミナですが
シリカを含む、あるいは、シリカにマグネシウムを含む
など、他の成分が混ざったものです。
 
コーデュライトは、セラミックスの伝統企業コーニングが
開発したとされ、このような名前がついています。
 
東部エスタブリッシュメントの邸宅が並ぶ
北米でも最も初期から植民地化された地域に
(今でも、米国は、植民地のままです)
大河をはさんで、伝統企業の主力工場が
並んでいます。
エジソンの電球をつくった
一般電気株式会社(ジェネラルエレクトリック社)と
電球材料のガラスをつくったコーニング社です。
 
コーニング社といえば、細胞培養の研究にも
ディファクトで使われるパイレックスブランドの
開発企業です。
 
コーデュライトは、DPFフィルター素材として
最有力とされていました。
 
実は、戦車の装甲にも使われるのですが
オイル微粒子とは関係ないので
その話はやめておきましょう。
 
 
では、突然、ボッ! と1500度Cで
燃えあがるオイル微粒子をトラップしておく
素材として、十分な耐久力があるのかというと
それは無理があります。
 
とはいえ、他の素材も、無理があります。
 
アルミナの原料である酸化アルミと
酸化チタンを混合して焼成した
チタン酸アルミは、いいところまで
いくのですが、ある温度帯で熱分解を起こし
ボロボロに崩れてしまいます。
機械強度も弱く、DPFフィルターに成形すると
壊れやすいという問題があります。
温度変化についても結局は使い続けると
壊れてしまいます。
 
SiC エスアイシーとそのまま読みますが
炭化ケイ素化合物も、有力候補とされてきましたが
結局、ここまでの熱応力には耐えられず
また、非常に硬い物質なので(工業砥石に使われます)
成形加工が大変です。
SiC は導電性セラミックスです。
アルミナのような金属酸化物の場合、
電子を放出しやすい金属原子から
電子を引き寄せやすい酸素原子が、
電子を奪い取ってしまうような関係になり、
電子が自由に移動しにくいので
電流は流れにくく、熱が拡散しにくいので
熱応力に弱くなります。
電気抵抗が大きいことと
熱応力に弱いことは
ある程度、相関があります。
その点、SiC は、同じ4価の元素同士、つまり
ケイ素と炭素が、電子を分かち合うような関係で
結合しますので、電子がある程度、自由に動き回れ
物質の端から端まで、電子を伝え、つまり電流が
流れ、熱も拡散しますので、温度変化のひずみが
素早く分散、解消され、熱応力に強くなります。
 
熱の分散だけで
熱応力への耐久度を説明できるのではありません。
もっと、根源的な要素として
その物質そのものの熱膨張係数というものがあります。
SiCは、熱膨張係数が非常に小さい
炭素繊維の4倍くらいしかない
温度が変化しても、体積変化が小さいので
応力も小さい、という特性があります。
 
 
それでも、いきなりパッと1500度Cまで一気
 
これには耐えられません。
 
 
窒化ケイ素も硬すぎて加工は無理
βサイアロンも、そもそもつくるのが大変で
ましてやフィルターにするのは無理、、、、
 
 
DPFフィルターの大きさは、
乗用車用なら、手のひらに載り
軽いですが、
トラック用は、一抱えもあります。
 
外郭は円筒ですが、筒の入り口から出口に
向って、排気ガスが通る小さな孔がいくつも
あいている、というより、縦横、十字に仕切られた
薄い壁があり、四角い通路が多数できている
という構造です。 壁の厚みの規格は
公表されていたのか、秘密事項だったのか
忘れてしまいましたので、書きませんが
「物凄く薄い」ものです。
 
フィルター本体をキャンニングと言って
(カンニングではありません)、金属容器に
詰めるので、外からの衝撃はある程度
防いでくれるのですが、それでも排気ガス処理装置
ですから、振動はありますし、加速度も受け
車体の底にあるので、ドカッと衝撃を受けることも
あります。 
こうした衝撃に耐える機械強度をもつこと
これも、DPFフィルターの必須条件です。
 
DPFフィルター原料は、ドロドロに混ぜます。
この際、微粉加工するのですが、粒径が小さすぎると
とんでもないコストがかかります。
紛体の粒径を半分にすると、大体、10倍の電気代が
かかります。 
細川ミクロン社のボールミルとか、実際に観ないと
イメージがわかないでしょうが、紛体加工装置で
粒子を小さくしていく際、小さくなればなるほど
削りにくくなるので、益々、削るのに時間がかかります。
また、材料によっては、爆発のリスクがあります。
小麦粉だって、空気中に分散させて火をつければ
爆発することがあります。
金属粉なども、大爆発を起こすことがあります。
アルミナのような酸化物は、もう酸化しているので
それ以上、酸素と反応して燃えることはありませんが
とにかく、コストがかかります。
超微粉は、それだけ紛体加工装置を長時間
動かし続けたということなので、
いわば電気の缶詰のようなものなのです。
 
細かい粉にすると、次に、糊を混ぜます。
後で、焼成する際に、糊は燃えてしまい
何を使ったか、証拠が残りません。
リバーステクノロジーで
製品を分析しても、
使われた糊はわかりませんので
ここは秘中の秘です。
 
で、押し出し成形機で
ゆっくり押し出すのですが
ここで、どうやって、ゆっくり押すのか
相当の技術ノウハウがあります。
押し方に少しでもムラがあると
年輪のようなムラが製品に
ついてしまったり、
シリンダーをスクリューネジで
回転しながら押すと
製品に回転のひずみがあらわれます。
 
 
 
金型は更に秘中の秘ですが
ところてんの逆をやるわけです。
 
ところてんは、押し出すと
小さく、四角く切られた麺類の束のように
なりますが、DPFフィルターは逆です。
ところてんを切る網目の形のまま
フィルター素材を押し出し、
ところてんの身に相当する形の
孔があいているものを成形するのです。
薄く成形しても、崩れず、歪まず
焼成すると体積が10~15%縮小しますが、
それでも、歪まないという
非常に難易度の高い技をクリアしなければ
いけません。
 
しかも、三混触媒フィルターと異なり
物理的に微粒子をトラップしないといけないので
構造に捻りがあります。 
全体的にねじり回転を加えながら
孔がカーブしていくものもあれば
二つに一つずつ孔をつめ、ガスが
残り半分の通路を通ると、
今度は、フィルターの後半では
今まで詰まっていたところの孔が通り
今まで通ってきた孔は、詰まっている
そして、継ぎ目のところは、渦が発生する
空隙がある、、、 などなど、それはもう
複雑な構造をしています。
 
成形するだけで大変なのですが
これが、1500度C 部分的にボッ!
即、急冷 に耐えないといけないのです。
 
 
で、結局、DPFフィルターを
通常の素材でつくると
使用中にフィルターが壊れてしまいます。
 
乗用車の場合、
一度、装着した装置は
そのまんまです。
DPFフィルターは
金属容器の中に入ってますので
壊れても、誰も気づきません。
運転上は、特にトラブルになりません。
ただ、オイル微粒子をトラップする
能力が落ちていく、ということです。
 
トラックの場合
時々、中身のDPFフィルターを
取りだして、溜まったオイル微粒子を
除去するため、蒸し焼きにします。
ドラム缶のような炉に入れて
酸素が不足している状態で
低温焼却すれば、溜まったオイルも
徐々に気化し、少しずつ燃えてくれるので
いきなり1500度Cにはなりません。
 
すると、壊れてれば、見ればわかるのですが
そこは、まあ、業界間の話合いなど、
いろいろあるのだそうです、、、、
でも、やっぱり、ばれて、業界内大騒動と
なりました。
 
 
フォルクスワーゲンをはじめとする
ドイツ系自動車メーカーが採用した
素材は、大阪のベンチャー企業が開発した
もので、1500度Cに耐えるだけでなく
急冷も、急加熱も、全く平気です。
 
チタン酸アルミ系ではありますが
アルミナと酸化チタン以外の成分も
加えてあります。
 
この素材、棒状に加工して
1500度Cに熱すると
真っ赤になります。
そのまま、一方の端を
氷水に突っ込んでも
ヒビ一つ入りません。
一方が、1500度Cで
真っ赤なまんま、他方は
氷が浮いたままの水で
ぴったし1500度Cの
温度差があっても
全く平気なのです。
 
熱の分散が早いかどうか
という問題ではなく
熱膨張係数がほぼゼロ
炭素繊維とほぼ同じ
 
ここがポイントです。
 
 
普通、物というのは
温度を上げると
膨張するもので
鉄も相当、体積が
増えますが
鉄筋コンクリートは
鋼鉄とコンクリートの
熱膨張係数が近いため
冬でも夏でも、一緒に
膨らんだり、縮んだりするので
割れたりしないのです。
 
ほとんどの物質は、
温度を上昇させると
膨張します。
中には、収縮するものもありますが
膨張も収縮もしないものは
滅多にありません。
 
大阪の素材も
分子レベルで細かく観れば
膨張はしているのです。
ところが、各々の成分がつくる
微小構造が、温度上昇に伴って
互いに入れ込む構造になっており
ちょうど温度上昇による体積膨張を
打ち消す構造のなっています。
 
「おそるべき偶然が重なった」 のです。
 
この素材。
とんでもなく画期的なのですが
まあ、素材ビジネスというのは
時間がかかるのなんの、、、、
 
なかなか採用してもらえず
やっとこ、ドイツの自動車産業が
本格採用したのです。
 
 
これなら、NOXが発生しにくい
条件で運転し、オイル微粒子は
DPFフィルターでトラップし
時々、溜まったオイル微粒子は
燃やしてしまえば、排気ガス問題に
抜本的な解決の道が見えるのですが
その矢先に、可能性を打ち出した
フォルクスワーゲンが袋たたき
という状況になってしまいました。

>>全投稿記事一覧を見る