藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > ANK療法実施医療機関41施設が届出受理される

2015年12月01日

  

がん, 免疫

2015.12.1.
 
 
ANK療法とCTL療法を実施する医療機関
全国で合計41施設が、地方厚生局に、
実施の届出を提出し
受理されています。
 
 
厚生労働省には、
再生医療研究推進室というのがあり
出先として、全国7地方に、地方厚生局内に
再生医療専門官がいらっしゃいます。
 
 
どう考えても、免疫細胞療法は
再生医療ではないのですが
法的には、再生医療「等」に区分されます。
 
 
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」というのが
昨年の11月25日に施行されていたのですが
1年間の猶予期間があり、先月の25日から
「事実上」の実施になりました。
 
ギリギリまで、詳細な点で不明なことがあったのですが
ともかく、治療を行う医療機関は、届出を提出し
受理されないと、「やってはいけない」 ということです。
 
そこで、全国で、ANK免疫細胞療法や、CTL療法を実施する
医療機関が、実施する治療毎に、届出を提出し
受理されているのです。
 
ANK療法を行うのであれば
ANK療法としての届出を受理されないとだめ
ということです。
 
 
iPS細胞から、心臓をつくって移植する
というのは、「第一種再生医療」に区分され
これは、相当、厳しい規制がかかります。
 
がん免疫細胞療法の中でも
患者本人の細胞を用いるなど、
いくつかの条件をクリアすれば
最も安全とされる「第三種再生医療」に
区分されます。
 
 
全国で、2000を超える医療機関が
法的には、細胞加工といいますが
細胞培養を行うという届出を受理されています。
企業は13社ですが、こちらは「承認」です。
 
リンパ球バンクとしても、会社として細胞培養の
受託の当事者となることは検討していますが
現時点では、内容は何も変わらないのに
コスト増になるだけで
少なくとも、患者さんにとって
何のメリットもありませんので
とりあえず、現状通り
医療機関さんに細胞培養センターを
提供するというスタイルを取っています。
 
実態としては、細胞培養を実施する方が
点滴によって培養細胞を患者さんに
戻す医療機関より、はるかに、複雑なことを
行うのですが、細胞培養の届出の方が
大変、シンプルです。
 
一方、点滴を行う医療機関は、膨大な
書類を作成する必要があります。
 
 
どうしても、医療機関は、医薬品メーカーと違って
書類つくりは慣れていませんので、
全国各地で、かなりの
混乱が見られるようです。
ANK療法の場合は、
これを審査するネットワークも存在し
あくまで当事者は医療機関ですが
リンパ球バンクもお手伝いしますので
医療機関が単独で参入しているところよりは
混乱はしないのですが、まあ、
各地で、いろんな話が聞こえてきます。
 
 
特に、歯医者さんで、細胞培養を
行っているところが多いようですが
これまで、業界団体のような組織を
つくってこなかったので、統一された
受け皿組織のようなものが
見当たりませんでした。
 
 
 
治療の届出には、国の認定を受けた
委員会の審査を受けなければいけないのですが
免疫細胞療法の専門家など、ほとんどいないのですから
審査にあたる委員会の編成も大変です。
数が足りなさすぎるといわれています。
 
 
法的には、点滴をするだけでもなんでも
医療行為を行う医療機関の責任で実施するもので
細胞培養は、あくまで、治療を実施する医療機関からの
指示通りに培養をしたんですよ、という立ち位置になります。
 
とはいえ、日常、患者さんを相手に臨床行為を行いながら
片手間で細胞培養もやるというのは無理がありますので
そこは、国も、細胞培養業務は、外部委託していいですよ
ということにしたのです。
 
 
  なお、治療計画の届出が受理されたケースは
  1820件と報道されています。
 
 
さて、免疫細胞療法は、米国NIHが実施した大規模臨床試験により
有効性や、基本的な手法が確立したLAK療法を原点としてます。
 
現時点では、LAK療法を上回るような
大規模臨床試験もなければ
「大規模臨床試験によって顕著な効果が証明されている」
免疫細胞療法も存在しません。
 
樹状細胞では効果がみられないため
NK細胞を混ぜることで効果を証明した
「プロベンジ」が米国政府承認を取得していますが
これは、若干の延命効果を示したに過ぎません。
一応、活性化したNK細胞が、多少なり存在すれば
効果は出るという証明にはなっていますが
LAK療法のように、大きな腫瘍が吹き飛ぶような威力はありません。
 
当然、ANK療法実施医療機関が、参照する論文として
LAK療法に関するものをひっぱることになります。
 
 
これ抜きに免疫細胞療法を語るのは「まちがっている」のです。
 
 
他に、もっと新しい論文はないのか、というと
いくらでもありますが、まず、あれほど資金を投じて
本格的に検証したもので、かつ、顕著な有効性を示した
両方の条件を満たすものはありません。
 
 
ANK療法も臨床試験はやってますが
規模は、全然、小さく
何より、使えた資金が
NIHとはけた違いです。
いろんなデータをそろえることは
現実問題として、できないのです。
 
 
 
LAK療法は、3日間連続で動脈血を体外循環させ
延べ数十リットルもの血液からNK細胞をかき集めました。
 
 
  NK細胞を活性化し、数十億個単位で投与し
  かつ、体内の免疫抑制を十分、緩和する措置を行えば

 
 明確な抗腫瘍効果を発揮する
 
 
ことを証明しています。
 
 
ところが、大きな腫瘍が壊死を起こすこともありましたので
ICUを占拠し続け、非現実的なコストがかかりました。
壊死を起こされると、血液中に、大量のカリウムやリンが
飛び出してくるので、心不全や腎不全に陥ります。
 
ANK療法は、これを上回る治療強度を実現しましたので
当然、1クール丸々、一度に体内に戻せば
大きな腫瘍が、一気に壊死を起こすリスクを
想定する必要があります。
 
 
がん治療は、ただ、強ければいいのではありません。
 
 
 
抗がん剤も、強すぎると壊死を起こしますので
治療強度を加減しながらやっているのです。
 
 
ANK療法も、十分以上、強すぎる治療強度がありますので
一気にはやらずに、12分割しているのです。
すると、一回の点滴の強度は落ちてしまいますが、
安全性は確保されます。
 
また、免疫抑制を押し返すのは、一発勝負をかけるより
何度も、何度も、免疫刺激を継続し、長期間、体内の
免疫レベルを高く維持する方が好ましいという面もあります。
 
 
 
 がん細胞を傷害する能力が圧倒的に高いNK細胞が発見され
 
 LAK療法の大規模臨床試験が実施され
 
 ANK療法が開発された

 
免疫細胞療法には、この3つのメインイベントが重要であり
他のことは、さほどのインパクトはありません。
 
 
インパクトのない話をいくら並べても意味はありません。
 
 
さて、ANK療法以外にも
NK細胞培養法というのは
いくつも存在します。
かのNIHも、やってはいます。
ところが、いずれも特殊な環境下で
偏った特性をもつNK細胞を
増殖させてしまいます。
 
「野生型」NK細胞というのは、活性が高ければ
如何なるがん細胞でも傷害します。
 
MHCクラスIを発現するがん細胞を傷害しない
NK細胞というものが、インターネット上の情報としても
蔓延していますが、これは、特殊な環境で
偏った刺激を与えたために、
変わり種のNK細胞だけを増殖させてしまったために
そうなっているのです。
 
野生型からは、完全に逸脱しています。
 
 
典型的なやり方は、マイクロビーズに抗CD3抗体を
つけて、T細胞を引き寄せ、そのままマイクロビーズを
磁石で引っ張って、まずT細胞を除去し、その後
残ったNK細胞を増殖させる、というものがあります。
 
この方法の致命的な問題は、活性が比較的高めの
NK細胞は、大量の細胞間接着物質を分泌するので
マイクロビーズやT細胞にくっついてしまいます。
活性の高いNK細胞を選択的に除去して
残った活性の低い選別されたNK細胞を
増殖させるので、活性が低い分だけ
自爆はしにくいですから、増殖は容易なのですが
がん細胞を攻撃する能力はがた落ちです。
 
あるいは、NK細胞の10倍以上の末梢血リンパ球集団を
フィーダー細胞(餌やり細胞という意味になります、、、)
として混ぜるというものもあります。
通常、上記のとおりのT細胞除去のあとに組み合わせて用いられます。
末梢血リンパ球集団には、放射線を照射して異常化しておきます。
 
これをやってしまうと、正常なNK細胞は、異常細胞集団との戦闘に
疲れ果て、あるいは自爆し、いなくなっていきます。
あまり、活発に攻撃しない、特に、MHCクラスIを認識すると
あまり活発に攻撃しないタイプのNK細胞は、戦力を温存したたま
増殖を続け、培養が仕上がったころには、特殊な攻撃力が弱い
それもMHCクラスIをみたら、あまり攻撃しない変わり種の
NK細胞集団となってしまいます。
これでも、がん細胞のタイプを選べば、がん細胞傷害活性
いわゆるNK活性が、あることはあるのですが
体内にいるがん細胞は、あらゆるタイプの認識パターンをもつからこそ
如何なるがん細胞でも傷害できるのです。
 
特殊な条件で培養してしまった
偏ったNK細胞集団では、多くのがん細胞を撃ち漏らします。
撃ち漏らしたら、生き残ったがん細胞が増殖するので、
治療効果は期待できません。
 
 
大学や、今日のNIHなどでは、
概ね、上記のような、偏ったNK細胞しか増殖させられない
方法で、NK細胞培養が実施されています。

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