藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > 自然免疫(17) NK細胞は特異的にがん細胞を攻撃する

2008年11月19日

  

免疫

2008.11.18. 昨日、特異性と非特異性について少しだけ書かせていただきましたが、この言葉は、一般の方にはなかなか理解しにくい、といいいますが、すんなり飲み込めない言葉のようです。よく質問をいただくのですが、質問される方もピンポイントな質問ができないようです。 
 
簡単に言ってしまうと、 あまり気にしなくてもいい、ということなので、あ、そう、と納得された方は、無理に読まれなくてもいいと思います。 なにせ、しち面倒臭い話ですから。 ただ患者様からのご質問が多いので、頑張って、少しでも分かりやすいように工夫して書いてみますので、ご関心ある方は最後までお付合いください。
 
最近、特にそうなんですが、メディアは盛んに、「特異的にがん細胞を攻撃する」、「がん特異抗原を用いて、、、」という表現を使い、しかも特異的な反応が善であり、非特異的なものは強くない、とか良くないもの、というニュアンスを醸しだしています。 つい先日も、某有名バイオ関連情報誌が、武田薬品さんが開発していた「がんワクチン」が開発中止になった事件を取り上げていました(がんワクチンを打った患者さんのグループの方が、打たなかった患者さんのグループより、早く、亡くなっていかれるので、試験を中止したのです)。記事の中では、このがんワクチンは、非特異的反応だから、効かなかったのだろう、まだまだ開発中のがんワクチンは特異的だから期待できる、とまで書いていました。何を根拠に?と言いたくなりますが、無茶苦茶、単純に特異的なものはいい、という論調が益々、強くなってきているのです。 ところが実は。  特異的か非特異的かは、視点、「何を基準に見るか」、によって、全く同じ反応が特異的となったり、非特異的となったりするのです。  また、ほんとうは、非特異的という言い方は、単独で使ってはいけないのです。 相対的な表現、ということなのですが、こういう言い方では、かえって分からないでしょうから、例をあげて説明しましょう。  
 
がん細胞表面にある抗原、仮にAとしましょう。このAという物質に特異的に反応する抗体があったとします。 これは、その抗体Xが、その特定の抗原物質Aに結合する、という意味です。他の抗原ではなく、あくまでもその抗原物質Aの特有の性質に反応し、結合する、ということです。 そして、AであってもBであっても、Cであっても、A以外、様々な抗原物質に結合する抗体Yがあったとすると、抗体YはAに非特異的に結合する、という言い方になります。 Aにも結合はするのだけども、別にAでなくても、他の抗原にも結合するので、一応、Aを認識はしているけど、Aだけを特定して認識しているのではないということです。 ところが、です。 もし、抗体Yが、がん細胞のもつ抗原なら何であっても結合し、がん細胞以外、正常細胞のもつ抗原には結合しないとしたら、この抗体Yは、「がん細胞表面抗原A」に注目して見ると、非特異的にAに結合する、ということになりますが、「がん細胞表面抗原全般」に注目して見てみると、特異的にがん細胞表面抗原に結合する、ということになります。 あれ、同じ抗体が、同じ抗原にくっついてるのですよ。  でも、細胞レベルで、がん細胞か、正常細胞か、という視点で眺めた場合と、細胞表面抗原物質レベルで、抗原Aだけを認識するの、他の抗原もごっちゃに認識してしまうの? という視点で眺めた場合とで、同じ物をみているのに片や、特異的、片や非特異的、となってしまうのです。  抗原Aに対してどうか、では、がん細胞というもっと大きな括りで、対象の範囲を広げてみればどうか、そうすると、抗体YはAに対して非特異的、がん細胞に対しては特異的に結合する、ということになります。 
 
残念ながら、このような、がん細胞に特異的に結合する抗体はみつかっていませんが、NK細胞は正に、がん細胞を特異的に攻撃するものなのです。 
あれ??? 混乱しましたか?  
 
特定の性質をもつがん細胞Zを標的に訓練したキラーT細胞、つまりCTLと化したキラーT細胞は、覚えたがん細胞Zを特異的に攻撃します。 ところが、Z以外の覚えてないがん細胞は攻撃できません。 NK細胞は、CTLの訓練に使ったのと同じがん細胞Zを攻撃しますが、Z以外の他のがん細胞も攻撃するので、Zという特定のがん細胞を基準に物を見ると、NK細胞は、Zを非特異的に攻撃する、ということになります。 他のがん細胞も攻撃するので、Z特有の何かを認識しているのではないのです。 そうではなく、がん細胞特有の何かを認識するので、NK細胞は、がん細胞全部を対象として物を見ると、NK細胞はがん細胞を特異的に攻撃する、ということになります。 ううん、どうでもいいや、と思われた方、正解です。 学問的には、特異的かどうか、というのは重要なのですが、あくまで、何を中心、基準に物を見るかによって、同じ反応が特異的に見えたり、非特異的に見えたりするのです。 NK細胞の攻撃力は、非特異的なものである、と言ってる人がいれば、何を対象に、特異性を定義しているのですか? と、聞いてみればいいのです。 え? という顔をしたら、その人は、科学の基本を知らないのです。   
 
最後にだめ押し。CTLは、標的がん細胞Zを特異的に攻撃する、つまり、この患者さんがもっている、Zとは性質が異なる他のがん細胞は攻撃しない、ということです。 一方、NK細胞は、がん細胞Zを非特異的に攻撃し、そして、全てのがん細胞を特異的に攻撃します。 

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