藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP > 自然免疫(19) 自然免疫が動いて初めて獲得免疫を動かす

2008年11月21日

  

免疫

2008.11.21. NK細胞や、そもそも免疫こそが、がん治療の本命と考えられてきた科学的根拠について、暫く、続けて書くつもりでしたが、たまたま、蓮見ワクチンの記事が週刊誌に載ってるのを読みましたので、少し、自然免疫と獲得免疫の関係について書かせてください。 (がんワクチンとか、樹状細胞については、いずれ、獲得免疫としてまとめて書くつもりです。)

最初の頃に、体外から異物が入ってきても、たちどころに分解してしまう、という消化との境界が曖昧な自然免疫の分解機能、つまり、各種分解酵素によって、バクテリアやウィルスが侵入したら、あっという間にバラバラにして、無害化する能力について書かせていただきましたが、NK細胞やマクロファージ、あるいは、好中球など、細胞による自然免疫もまた、出会ったその場で、いきなりズドン! です。 生まれて初めて会う敵でも、その場で、いきなり「死んでもらいます」とやるわけです。 中でも、がん細胞と遭遇しても、いきなり殺してしまうのは、NK細胞です。 マクロファージなど、他の免疫細胞も、がん細胞を殺さない訳ではありませんが、然程、敏感ではありません。 がん細胞殺しといえば、なんといってもNK細胞です。 

一方、獲得免疫系が作動するには、時間がかかってしまいます。 

よく、樹状細胞が抗原情報をマクロファージから受け取り、受け取った抗原を細胞表面にあるレセプターに提示し、T細胞を刺激する、、、 という事が書いてあります。 これが、樹状細胞療法とか、樹状細胞を用いたがんワクチンと呼ばれるものの根拠となっているのです。 ですが、変ですよね。 マクロファージは、がん細胞と一緒にしても、あんまり反応しませんよ。 では、樹状細胞はどうやってがん細胞の情報を受け取るのでしょうか。 がん細胞と樹状細胞を一緒に培養してみるとどうなるでしょう。 何も起こりません。 実は、樹状細胞にがん細胞の抗原情報を与える、というのは、生半可なことではできないのです。 それで世界中で今も研究が続いているのです。 

この樹状細胞というものの正体。 

がん治療に用いる樹状細胞は、未熟な前駆細胞から、人工的に樹状細胞に分化させてつくったものです。 元々、体の中に存在する自然な状態の樹状細胞は、小腸や皮膚の粘膜の中に、べたっとはりついて点在しているものです。
それを、がん治療に使おうと応用を試みているのです。 樹状細胞は、生まれながらに、がん細胞の殺し屋、ではないので、これを使いこなすには、数々の工夫が必要であり、今も改良の途上なのです。

ところが。最近も、論文が出ていましたが、NK細胞は、殺したがん細胞の抗原情報を、自ら提示します。 マクロファージのように、がん細胞を食べてしまうのではなく、自殺させて、グシャ、っと自ら潰れるように仕向けるのですが、それでも、がん細胞がもっていた物質を、自らの細胞表面に提示し、獲得免疫に動員をかけるのです。 わざわざ、樹状細胞を苦労して教育する努力をしなくても、NK細胞が、がん細胞を殺せば、基本的に、樹状細胞に期待している機能は発揮するのです。

NK細胞や、マクロファージは、自らが直接、手をくだして、外敵(がんは、内敵というべきかもしれませんが)を殺すだけではなく、強い免疫刺激を周囲の他の免疫細胞に与えます。 鼻などの粘膜にウィルスが感染すると、熱が出ますが、これは、口腔内粘膜内に潜んでいたマクロファージが、鼻の粘膜から分泌されたインターフェロンに反応して、動き出し、今度は自分が大量のインターフェロンを分泌しながら全身を巡り、熱を出させます。 ANK療法を受けられる患者さんも、初回とか、二回目に、培養細胞を体に戻す時は、凄い高熱がでることが多いのですが、これも、活性化されたNK細胞が、インターフェロンなどのサイトカインという物質群を、大量に分泌することによって引き起こされる反応です。  

免疫力は、普段から、爆発すると体を溶かしてしまう位の強力な攻撃力を蓄えつつ、同時に、実際には爆発しないように、強力な免疫抑制がかけられています。 この状態から始まって、感染や、がん細胞を発見した自然免疫系の細胞が、「戦闘態勢!」を宣言すると、免疫の攻撃レベルが上昇する、免疫抑制のブレーキがはずれていく、という状態になり、腫瘍組織や、菌体、ウィルス感染細胞などを激しく攻撃するのです。 その後に、獲得免疫にも出動命令が下ります。 

がん患者さんは、例外なく、免疫抑制下にあります。 この状態では、獲得免疫は動かないのです。 では、免疫抑制をはずせばいいではないか、と、免疫を抑える働きをするTreg 細胞(ティーレグと読みます、T細胞の一種です)を抑えてしまえ、という研究も盛んに行われています。 (T細胞の概ね半分は、免疫を刺激する細胞、半分は、免疫を抑制する細胞です。)  実は、免疫抑制下で、ワクチンを使っても、獲得免疫を動かせないことは、よく知られているのです。そのため、昔から、ウィルス感染症のワクチンを作る際にも、感染力をもった病原体そのものを使うか、毒物など、自然免疫を強く刺激するアジュバントというものを加え、まず自然免疫を叩き起こして、免疫抑制状態から、免疫励起状態に移行させて、ワクチン効果の発揮を狙うのです。

相手がウィルスであれ、がん細胞であれ、

「先ず創めに自然免疫ありき」

なのです。

 

>>全投稿記事一覧を見る