藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2019年08月05日

  

えとせとら

永年、親しくしている人が激痛に襲われ救急車で搬送され尿路結石と診断されました。

 

腎臓がパンパンに腫れていると言われたそうですが血液検査の結果を見せてもらうとシュウ酸も高値で、尿酸が固まったのかシュウ酸がかたまったのか、両方ともかかわっているのか正確なことはわかりませんが、糖質ゼロ、ケトン体がかなりの高値でした。 あまり数字だけで判断してはいけないながらもこれは如何にもまずいという検査結果でした。

 

ご当人はまじめに糖質制限をやってケトン体が高いという「体にいい」状態が確認できたと思っている節があったので、ケトン体が多すぎると腎臓に尿酸が溜まる傾向があると何度も言い聞かせました。 以前、見る度にガリガリ痩せていくのでどうしたのか、と気になったのですが特に具体的な疾病を疑う診断はなく、でも何もないのにガリガリ痩せる訳はありません。 そういえば豆乳ヨーグルトを自分で作っていたな、と聞いてみると毎日、大量に飲んでいました。 植物性たんぱく質はほとんどが難消化性でそのまま食べても栄養になりませんが、大豆はその塊のようなものです。大豆蛋白は小腸粘膜に張り付き、栄養の吸収を阻害する他、大豆は、人間のたんぱく質分解酵素トリプシンの阻害物質を大量に含み、私たちの消化の働きを妨害します。そこへヨーグルトは腸内細菌を固めてしまう作用もあるため、少し食べたときの影響はわかりませんが、毎日、大量にこんなものを食べて、ほかの食事を控えてしまうとガリガリ痩せるのは当たり前です。 死んでほしくないから頼むから豆乳ヨーグルトはやめてくれ、と懇願し、やがて肉付きがよくなり血行もよさそうになってきたのでヤレヤレと思ったら今度は救急搬送です。

 

何を食べてるんだ、と聞いてみると、朝はプロテインだけ。 他、詳しくは書きませんが、まあ油脂を飲んでカロリー源とし、肉や野菜は食べるものの糖質が多いと考えられるものは口にしないようです。

 

血液中の糖分が極端に少なくなり、ケトン体の濃度が高くなるケトーシス状態はある種の飢餓状態のようなものです。 人類はもともと、ケトーシス状態が通常の状態とする説もありますが、全身の正常細胞にとってケトンはあまり好ましい栄養ではなく、一方、脳の神経細胞は効率よくケトンを代謝しますので、限られた栄養を脳に優先的に供給して最低限の活動を維持する状態ともいえます。 中には、がん細胞はケトンを食べないので糖質制限でがんが治るという極端な風説も流れていますが、NK細胞もケトンは食べません。がん細胞は何を食べても生きていこうとしますので、特に悪性度が高いものは正常細胞に消化酵素を吐きかけて食べてしまうのですから極端な糖質制限を行えば、NK細胞は飢餓に苦しみ、がん細胞は平然と正常細胞を栄養にして増殖を続けるという救いようのない状況に陥ります。

 

先ほどの永年、親しい人ですが明らかな疾病を抱えている状態で様々な検査結果も異常値を示していますので、医師の指示に従っていただくほかないのですが、極端に偏った食生活についてあまり医師も踏み込んでいないようなので、とりあえず、頼むからいろんなものを少しずつ食べてくれ、と懇願しています。 

 

ライオンだって肉だけ食べさせると痛風になります。摂取カロリーの過半がたんぱく質になると窒素代謝異常を来し、尿酸が溜まるからです。ああ見えて草食動物の小腸を真っ先に食べ、消化途上の植物を大量に食べ、脂肪も食べるので野菜サラダを食べなくても植物性の繊維などを取ってバランスを保っている訳です。 ハイエナはライオンの食べ残しをあさるとたんぱく質しか残っていないのですが、ライオンより丈夫な顎で骨を砕き、中の骨髄の脂肪を食べることでたんぱく質過多を防いでいます。 肉食専門に見える動物でもどうにかバランスは取っている訳です。 そこへ人間がプロテインだけを食べたら窒素代謝異常となり尿酸が溜まるのは当然でしょう。 予算のこともありますし、ちょっと今日は物足りない、ほとんどお肉食べていない、というときに少しプロテインで補充とか、プロのスポーツ選手で筋肉をつけないと、というならプロテインも役に立つでしょうし、実は、私も少しアミノサプリを口にすることがあります。空腹が続き、このままだと筋肉分解して栄養を補充するぞ、でも今、食事している暇ないという時に少し補充しながら、筋肉に少し負荷をかける運動をして、筋肉は必要なんだから削るなよというメッセージを体に送る、という感じです。どかどかと毎日、大量に取るようなことはしません。

 

また、中鎖脂肪酸が体にいいんだ、すぐに分解されてエネルギーになる、と言われています。ケトン体体質を目指し日々、努力する人の中には中鎖脂肪酸だけをとってカロリー源にする人もいるようです。 私もココナッツオイルのビンがオフィスの机の上においてあります。酸化しにくいものなのでどかっとビン詰めを置いておいても大丈夫です。  他にグラスフェッドバターもあれば、亜麻仁油や生絞りオリーブオイルもありますが、こういうのは冷やしたり、酸素や光を避けないといけないので保管は面倒です。 いずれにせよ少しそういので補充しているのであって、精製された油だけで生きていくつもりはありません。人類は糖質を大量に取りすぎて様々な疾病を招くようになった、という考え方はおそらく正しいでしょう。 ところが人間の体は複雑であり、本当のところ何がどうなっているのか断定することはできません。 糖質が悪い! と決め付けて今度は油脂を取ればいいんだ、と。おおむねのところ、間違いではないと考えられますが、かといって特定の精製油だけを取ると栄養としてはかなり偏ります。  糖質と一口に言っても、物質としてはD-グルコースと、D-フラクトース(果糖)だけではありません。D-マンノース、D-アラビノース、D-ガラクトース、L-フコース、L-ラムノース、D-キシロース、D-リボース、デオキシーD-リボース、NアセチルーD-グルコースアミン、NアセチルーD-ガラクトースアミン、Nアセチルノイラミン酸などなど、たくさんの「糖」が必要でこれらが複雑に結合しあって、私たちの体をつくり、分子レベルや細胞レベルの認識、情報処理において重要な機能を担っていますし、軟骨や粘膜は糖質でできているほか、細胞膜の内外はびっしりと糖質が覆っています。 核酸も中心部分は糖質です。あげればきりがないのですが一言で言えば 「複雑」 なのです。これらはいずれも体内で合成はされますが、極端に何かが少ないと合成には負荷がかかります。やはり、必要なものは必要なだけ食事でとるのが好ましいのです。 脂肪もいくつも種類があり、それぞれいずれも必要なものです。 

 

糖質も脂肪も単なるカロリー源なのではありません。

 

とりあえずいろんなものを少しずつ食べておけばどこかで補充がされている可能性が高くなりますが、特定の物質だけを精製したものを毎日、これが体にいいと信じて大量に食べ続け、他の食事を控えてしまうと、長年、親しい人を失うことになるかもしれないので、食事の話はいろいろ申し上げたいことがあるものの、単純にある部分だけを信じられるときわめて有害なことがありますので、迂闊にはいえないのです。

 

ちなみにシュウ酸はほうれん草にたくさんふくまれています。あとはお茶とか紅茶。 野菜の葉っぱは生で食べないと栄養が損なわれますが、かといって大量にバリバリと、それもほうれん草の生をバリバリと毎日たくさん食べたらシュウ酸を取りすぎるでしょうね。 これが体内でカルシウムと結合して塊をつくると結石となります。 

 

結石をつくる材料は尿酸、シュウ酸、カルシウムなどですが、石ができて痛くなったら初めて病気になったと本人は考えるわけですが、激痛を発する前に相当、腎臓に負荷がかかっているわけです。 尿酸はケトンではありませんが、ケトンの中心構造であるカルボニル基(炭素に酸素が一個、二重結合でくっついたもの)が三つも寄添って、ケトンであれば炭素がくるところに窒素が入った構造をしています。ケトンの寄り合いに窒素がねじ込まれたような構造です。 あまり水に溶けないので濃度が高くなると結晶化し、体内の体液の循環がよくないところで大きな結晶をつくってしまうと痛風となるわけですが腎臓の中で「石」になると、この石が動くときに激痛を伴います。 爬虫類や鳥類は水分を失わないために窒素を尿酸の形で、あの鳥の白い糞として排泄しますが、哺乳類は尿酸より小さな分子で水によく溶ける尿素として窒素を排泄します。その際、水を大量に失うのが哺乳類の弱点のひとつでもありますが、そういう仕組みになっているので尿素として排泄されず、尿酸として溜まってしまうと排泄に苦労することになります。 低濃度の尿酸であれば、腎臓が排泄できるのですが、ケトン体濃度が高くなると排泄が滞り、結果的に腎臓に尿酸が溜まることになります。

 

私自身も米や麦は食べませんし、人類史を振り返れば、大量の栽培植物を食べるようになってから自己免疫疾患を中心に「病気だらけ」になってきたのはおそらく事実でしょう。 これまでの常識を信じずに見直すことは重要と考えますが、一方で概ね正しいのかもという学説のエッセンスを部分的に拾い集めて、これが正しい、これが体にいい、と信じ、そればかり食べるともっとひどい病気になるかもしれません。

 

体の状態は絶えず変化するので、「今」、命が求めているものを食べる、それは糖質かもしれないし、プロテインかもしれないし、塩かもしれません。 食べる物自体に善悪はないのです。

 

 

 

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